『朧月』さんは、非常に冷静で、そして優秀だった。
彼は依頼を受けた振りをして、依頼主のことを『ツキノミコト』に報告した。
そこから、『ツキノミコト』の更に上の上司であるアイズに話が渡ったのだ。
こんな勝手な依頼、断ることは簡単だった。
しかし、これは俺を嵌めようとした真犯人を逆に罠にかける為の、絶好の機会だった。
そこで、俺は『朧月』さんと共に一芝居打つことになった訳だ。
『朧月』さんに俺の自宅に侵入してもらって、俺は不意打ちを受けた振りをした。
実に素晴らしい手際でしたね。
あらかじめ『朧月』さんが来ると知らなかったら、うっかり引っ掛かってたかもしれませんよ。
特に、俺の寝室から、秘蔵のルルシー映像のDVD(ルリシヤ監修)を取り出して、寝室の入り口に仕掛けていたところ。
あれはうっかり触っちゃいますよ。人間の本能というものを理解していらっしゃる。
おまけに、ピアノ線を引っ張ってから錐を突き立ててくるまでの、一連の流れるような動き。
まさにプロの技でしたね。いや、プロなんですけど。
とはいえ、あれはあくまで演技。
刺す振りをしただけで、実際には刺されてないし、従って毒も全く効いてない。
血糊は、ルリシヤが作ってくれたリアリティ溢れる一品である。
見た目、完全に血にしか見えませんよ。
何なら匂いまで完全再現されていて、職人ルリシヤの腕の高さを実感。
お陰で、この間抜けな復讐者達を騙すことが出来た。
協力してくれた『朧月』さんに感謝。
「…騙したのね。私達を、また…!」
怒りに燃える、片腕の復讐者。
騙したのね…と言われても。
恨むなら、愚かにも『ツキノミコト』に仕事を依頼した自分達を恨んでください。
それより、久々の再会を祝うとしましょう。
「また会えて嬉しいですよ。…ミューリアさん。エルスキーさん。…それにアシベルさんまで」
覚えているだろうか。
俺は覚えてますよ。…顔を観るまで存在ごと記憶から消えてましたけど。
ミューリア・エルレアス。
エルスキー・ミルヴァーレン。
アシベル・ウィシナー・カルトヴェリア。
かつて、『シュレディンガーの猫』という組織と『青薔薇連合会』が対立した時。
俺が初めてルナニア・ファーシュバルの偽名を使い、私立ランドエルス騎士官学校に潜入した時のクラスメイトである。
彼は依頼を受けた振りをして、依頼主のことを『ツキノミコト』に報告した。
そこから、『ツキノミコト』の更に上の上司であるアイズに話が渡ったのだ。
こんな勝手な依頼、断ることは簡単だった。
しかし、これは俺を嵌めようとした真犯人を逆に罠にかける為の、絶好の機会だった。
そこで、俺は『朧月』さんと共に一芝居打つことになった訳だ。
『朧月』さんに俺の自宅に侵入してもらって、俺は不意打ちを受けた振りをした。
実に素晴らしい手際でしたね。
あらかじめ『朧月』さんが来ると知らなかったら、うっかり引っ掛かってたかもしれませんよ。
特に、俺の寝室から、秘蔵のルルシー映像のDVD(ルリシヤ監修)を取り出して、寝室の入り口に仕掛けていたところ。
あれはうっかり触っちゃいますよ。人間の本能というものを理解していらっしゃる。
おまけに、ピアノ線を引っ張ってから錐を突き立ててくるまでの、一連の流れるような動き。
まさにプロの技でしたね。いや、プロなんですけど。
とはいえ、あれはあくまで演技。
刺す振りをしただけで、実際には刺されてないし、従って毒も全く効いてない。
血糊は、ルリシヤが作ってくれたリアリティ溢れる一品である。
見た目、完全に血にしか見えませんよ。
何なら匂いまで完全再現されていて、職人ルリシヤの腕の高さを実感。
お陰で、この間抜けな復讐者達を騙すことが出来た。
協力してくれた『朧月』さんに感謝。
「…騙したのね。私達を、また…!」
怒りに燃える、片腕の復讐者。
騙したのね…と言われても。
恨むなら、愚かにも『ツキノミコト』に仕事を依頼した自分達を恨んでください。
それより、久々の再会を祝うとしましょう。
「また会えて嬉しいですよ。…ミューリアさん。エルスキーさん。…それにアシベルさんまで」
覚えているだろうか。
俺は覚えてますよ。…顔を観るまで存在ごと記憶から消えてましたけど。
ミューリア・エルレアス。
エルスキー・ミルヴァーレン。
アシベル・ウィシナー・カルトヴェリア。
かつて、『シュレディンガーの猫』という組織と『青薔薇連合会』が対立した時。
俺が初めてルナニア・ファーシュバルの偽名を使い、私立ランドエルス騎士官学校に潜入した時のクラスメイトである。


