The previous night of the world revolution8~F.D.~

ーーーーー…闇の中から、密かに牙を研いで俺を狙っている者がいると思ったら。

これはまた、意外な人物でしたね。

俺は色んなところで人気者なので。誰に狙われてもおかしくないとは思ってたけど。

ぶっちゃけ、あなた達の存在なんて、さっき見るまで完全に消えてましたよ。

「ま、まさか…!これ…」

…暗殺者、とやらが指定した小さな空き家。

その家のリビングには、何故か古びたソファだけが置き去りにされていて。

わざわざ、背格好を俺に似せたマネキン人形が設置されていた。

ご丁寧に、四肢を拘束して血糊までつける手の込みよう。

良い仕事をしてくれますよ。

さすが、アイズ子飼いの暗殺者組織。

「…驚いているようですね」

人形ではない、本物の俺が。

リビングに姿を現すなり、部屋の中にいた三人はぎょっとしてこちらを振り向いた。

気づいてもらえたようですね。

俺、ずーっと隣室で待機してたんですよ。退屈で退屈で。

「何故…!あの暗殺者…!」

あぁ。

暗殺者…アイズご自慢の暗殺組織、『ツキノミコト』に所属する暗殺者、『朧月(おぼろづき)』さんのことですね。

俺だって驚いたんですよ。…まさか、サイネリア家当主を暗殺したのが、『ツキノミコト』の暗殺者だったとは。

最初、『ツキノミコト』に頼まれた依頼は。

サイネリア家の当主を殺し、その殺害現場に偽造した指紋や、盗んできた頭髪を残して、その指紋の人物に罪を着せること。

その人物が、まさかルレイア・ティシェリーであるということまでは知らなかった。

それを知ったのは、俺が容疑者にされてルティス帝国から逃げた後だ。

『ツキノミコト』サイドもびっくりしたらしいですよ。

まさか、上司(アイズ)の同僚だとは思ってなかったんでしょうね。

そうと知った時には既に遅く、俺は容疑者にされてしまっていた。

だが、それでも『ツキノミコト』は、依頼主を問い詰めることはしなかった。

これは依頼主に正式に依頼され、充分な報酬も支払われた、れっきとした契約だった。

報酬を受け取った以上、今更「この仕事はなかったことにしてくれ」とは言えない。

…だが、ここで依頼主が裏切りを冒した。

依頼主は帝国騎士団宛てに、自分達が真犯人であるとほのめかした。

『朧月』さんは俺を容疑者にする為に、指紋を偽造したり、苦労して髪の毛を盗み出したりしたのに。

その偽装工作を、全部無駄にしたのだ。

この行為は、契約のうちに入っていなかった。

これは裏切り行為以外の何物でもない。

しかも、裏切りはこれだけに留まらない。 

というのも、『ツキノミコト』を通さず、『朧月』さん自身に直接仕事の依頼をしたらしい。

こちらもルール違反である。

仕事の依頼は必ず、『ツキノミコト』を通さなければならない。

依頼主は多額の報酬を約束して、『朧月』さんに依頼をした。

この俺、ルレイア・ティシェリーを仕留めて、この小さな空き家に連れてくることを。