指定したポイント…そこは、帝都の外れにある、小さな空き家だった。
その空き家に、私達はこっそり足を踏み入れた。
死んだような静けさが広がっていた。
だが、私の心臓はうるさいほどに高鳴っていた。
いよいよ、待ち望んでいた瞬間が来る。
そう思うと、落ち着かないのも当然というものだ。
足音を潜めながら、真っ直ぐリビングに向かうと。
古びたソファの上に、「それ」はいた。
黒いコートを身体にかけて、ぐったりと項垂れている男。
いた。見つけた。…あの男が。
その姿を見つけるなり、脳みそが沸騰しそうになった。
「…!お、お前…!」
思わず殴りかかりたい衝動に駆られたが。
「…落ち着け」
私の協力者に止められた。
冷静を装ってはいるが、彼も声が上ずっていた。
緊張しているのだ。私と同じく。
私だけが、気持ちを逸らせる訳にはいかなかった。
あの男は、既に私達の仕掛けた檻の中にいる。
焦る必要はない。
「はぁ…はぁ…」
何度も深呼吸をして、私は何とか気持ちを落ち着けた。
やっと、待ち望んでいた瞬間が来たのだ。
…すぐに終わらせるのは勿体ない。
殺すのは当然だが、その前に地獄を味わわせてやらなくては。
私達が味わった、地獄のような苦しみを。
「…憐れなものね。そんな姿になって」
暗殺者は、神経毒を使ってあの男の…ルレイア・ティシェリーの動きを封じている。
おまけに、手錠と結束バンドで手足を拘束している。
逃げられる心配はなかった。
私は、ソファにぐったりと身体を預け、悶えるしかないルレイア・ティシェリーに言った。
「久し振りね。あなたはずっと、私のことなんか眼中になかったんだろうけど…私はずっと覚えてた」
ゆっくりと、そのソファに近づきながら。
「一日だって、一分一秒だって忘れたことはなかった。私を…私達を騙したあなたのことを。…私の腕を切り落としたあなたのことを」
今だって、その腕の傷跡が疼く。
片腕が亡くなったことで、私は帝国騎士になる道を絶たれた。
それどころか、自分の人生に希望を持って生きることすら出来なくなった。
ならば、どうするか。
決まっている。
私を地獄に陥れたこの男に復讐し、私を裏切った報いを受けさせる。
そうすることで私は初めて、この男の呪縛から解放されるのだ。
「…私達三人共、ずっとあなたを呪い続けてきた。何年もずっと…復讐する為に、様々な策を講じて…」
どれだけの時間と、労力と、費用がかかったことか。
協力者の一人が貴族出身でなかったら、平民の私達だけだったら、とても無理だったろう。
その貴族の協力者だって、暗殺者に報酬を支払う為に、家の財産を全て費やしてくれたのだ。
だから私達にとっては、これが最後のチャンス。
ようやくこの手が、お前に届く。
その空き家に、私達はこっそり足を踏み入れた。
死んだような静けさが広がっていた。
だが、私の心臓はうるさいほどに高鳴っていた。
いよいよ、待ち望んでいた瞬間が来る。
そう思うと、落ち着かないのも当然というものだ。
足音を潜めながら、真っ直ぐリビングに向かうと。
古びたソファの上に、「それ」はいた。
黒いコートを身体にかけて、ぐったりと項垂れている男。
いた。見つけた。…あの男が。
その姿を見つけるなり、脳みそが沸騰しそうになった。
「…!お、お前…!」
思わず殴りかかりたい衝動に駆られたが。
「…落ち着け」
私の協力者に止められた。
冷静を装ってはいるが、彼も声が上ずっていた。
緊張しているのだ。私と同じく。
私だけが、気持ちを逸らせる訳にはいかなかった。
あの男は、既に私達の仕掛けた檻の中にいる。
焦る必要はない。
「はぁ…はぁ…」
何度も深呼吸をして、私は何とか気持ちを落ち着けた。
やっと、待ち望んでいた瞬間が来たのだ。
…すぐに終わらせるのは勿体ない。
殺すのは当然だが、その前に地獄を味わわせてやらなくては。
私達が味わった、地獄のような苦しみを。
「…憐れなものね。そんな姿になって」
暗殺者は、神経毒を使ってあの男の…ルレイア・ティシェリーの動きを封じている。
おまけに、手錠と結束バンドで手足を拘束している。
逃げられる心配はなかった。
私は、ソファにぐったりと身体を預け、悶えるしかないルレイア・ティシェリーに言った。
「久し振りね。あなたはずっと、私のことなんか眼中になかったんだろうけど…私はずっと覚えてた」
ゆっくりと、そのソファに近づきながら。
「一日だって、一分一秒だって忘れたことはなかった。私を…私達を騙したあなたのことを。…私の腕を切り落としたあなたのことを」
今だって、その腕の傷跡が疼く。
片腕が亡くなったことで、私は帝国騎士になる道を絶たれた。
それどころか、自分の人生に希望を持って生きることすら出来なくなった。
ならば、どうするか。
決まっている。
私を地獄に陥れたこの男に復讐し、私を裏切った報いを受けさせる。
そうすることで私は初めて、この男の呪縛から解放されるのだ。
「…私達三人共、ずっとあなたを呪い続けてきた。何年もずっと…復讐する為に、様々な策を講じて…」
どれだけの時間と、労力と、費用がかかったことか。
協力者の一人が貴族出身でなかったら、平民の私達だけだったら、とても無理だったろう。
その貴族の協力者だって、暗殺者に報酬を支払う為に、家の財産を全て費やしてくれたのだ。
だから私達にとっては、これが最後のチャンス。
ようやくこの手が、お前に届く。


