The previous night of the world revolution8~F.D.~

ーーーーー…ルレイアは、得意げな顔で国民の悩みを解決してみせる、と意気込んでいたが。

俺には、とてもじゃないけどルレイアにそんなことが出来るとは思えない。

むしろ、余計な意見を出してルアリスの足を引っ張るんじゃないかと心配…。

ルレイアは、机の上に重ねていたたくさんの意見書から一枚を選んで、ぴらっと手に取った。

「ふむ、どれどれ…。…成程…」

何やら納得しているらしいルレイア。

「…おい、ルレイア。なんて書いてあるんだ?」

「これです」

と言って、ルレイアはその意見書をこちらに手渡した。

受け取って、ルアリスと共に読んでみる。

そこには、国民達から寄せられた、複雑で深刻なお悩みが。

『私は今年高校を卒業した女性です。就職して家計を助けたいのに、女だというだけで面接さえ受け付けてもらえず、いくつか面接してくれた企業も、結局採用されませんでした。女性にも働くチャンスをください』とのこと。

…うーん。深刻。

文章にすると淡々としてるけど、本人と家族にとっては、きっと人生を揺るがすような大変な出来事だったに違いない。

高校卒業して、就職先も進学先もない…。辛いよな。

「箱庭帝国は…女性の社会進出が進んでないのか?」

女だというだけで、就職どころか面接さえ断られるなんて…。

ルティス帝国で企業がそんなことしたら、大バッシングだぞ。

時代錯誤にも程がある。

箱庭帝国では、未だにそんな大昔みたいな女性蔑視の風潮があるのか。

「はい…。俺も改善しようと頑張っているんですが…。その…旧政府の名残で」

「あ、そうか…」

憲兵局時代の箱庭帝国は、男尊女卑の風潮が蔓延っていた。

今はもう憲兵局はいなくなったが、長年染み付いた風潮、イメージは、そう簡単には払拭出来ない。

って、ルアリスもルレイアも言ってたな…。この気の毒な女性が就職出来なかったのも、そのせいか。

男とか女とか関係ないじゃん、って俺は思うけど。

女性を採用するよりは、男性を採用したい。ってことなんだろう。

こういうことはセクハラに抵触するから、あまり言いたくないけど。

企業にとっては、いくら女性社員を育てても、結婚して寿退社したり。

あるいは、出産の為に退職、または育児休暇の取得…などなど。

ハナから男性社員を採用していれば、発生しなかったであろう様々なデメリットがある。

それなら、最初から女性は弾いて、男性を採用する方が良い。と、思う企業側の気持ちも分からなくはない。

だからって面接すら断るのは、さすがにやり過ぎだと思うけど。

箱庭帝国では未だに、男性が外で働き、女性は家で家事と育児…という、旧時代の観念が根強く残ってるらしい。

「なんか世知辛いな…。働きたい人に職がある世の中であって欲しいもんだ」

貧民街出身だからこそ思う。

働きたいのに働き口がないってのは、辛いぞ。

「はい…。女性の就職率の問題については、俺も対応策を色々と考えていて…。でも、こればかりはなかなか…」

「…そうだよな…」

まず、旧態依然とした国民達の意識を改革するところから始めないといけない。

これは、ルアリスが一人で頑張っても、そう簡単には変えられないだろう。