The previous night of the world revolution8~F.D.~

「国民から…意見書?って?」

首を傾げるルルシーである。

「はい。ルルシー殿、目安箱ってご存知ですか?」

「目安箱…。えぇと、確か学校とか会社に置かれてるヤツだよな?自分の悩みや不満や改善して欲しいことを書いて、箱に入れる…」

まぁ、大体その説明で合ってますね。

その起源は大昔の…っていうところから説明していると、歴史の勉強になってしまうので割愛。

「はい。箱庭帝国では各市役所や町役場に目安箱を設置して、国民達が匿名で自分の意見を政府に届けられるようにしてるんです」

ほう。

国民達の意見を少しでも聞こうと、努力しているようですね。

「へぇ、考えてるな…。帝国騎士団にも見習って欲しいくらいだ」

まったくですよ。ルルシー、もっと言ってあげてください。

帝国騎士団は貴族の集団だから、自分達の価値観こそが絶対である、という無意識な思い込みが根底にあるんですよね。

その点ルアリスは、少しでも国民の意見を聞こうと努力しているらしい。

「全ての意見を俺が読むことは出来ませんし、国民から不満を寄せられても、必ずしも改善出来るとは限らないんですが…」

「それはそうだろうな…」

ルティス帝国に比べれば、箱庭帝国な小さな国だけど。

それでも、一国の国民達の意見を、一人一人全員分聞いて、そしてそれぞれ改善するなんて不可能。

まぁ、でも国民の意見を一つでも多く聞こう、というその姿勢だけでも、評価に値すると思いますよ。

本当、ルルシーの言う通り、帝国騎士団にも見習って欲しいです。

目安箱に寄せられた意見書を、そのままゴミ箱に放り投げるのではなく。

自分の机の上に山にして、一枚一枚真剣な顔して読んでるんだから。

ルアリスがどれだけお人好しなアホか、想像がつくというものでしょう。

よし、良いでしょう。

そんなルアリスの心意気に免じて、俺も手伝ってあげますよ。

「悩み相談と言えば、この俺ですよ。どんな悩みも不満も、俺がばっちり解決してあげましょう」

「お前が…?ルレイアは人の悩みを聞く側じゃなくて、人の悩みのタネになる原因だろ」

ちょっとルルシー。それどういう意味ですか。

聞き捨てならないですね。

「失礼な。俺はこれまで、古今東西たくさんの女性の悩みをまるっと解決してきたんですよ?」

「嘘だろ…?お前がいつ女性の悩みなんて解決したんだ?」

「ちゃんと解決しましたよ?どんな悩みや不安、不満でも、ベッドに押し倒して全てを忘れさせ、」

「ほらな、ろくなもんじゃない。お前は他人の悩みを炎上させるだけだ。大人しくしてろ」

酷い。

俺のことを信じてくれないんですね、ルルシー…。俺は悲しいですよ。

でも、簡単には諦めませんよ。

ここはばっちり箱庭帝国の皆さんのお悩みを解決する、素晴らしい方法を考えてあげようじゃないですか。

「分かった、分かりました。俺、心を入れ替えて頑張りますから。ルアリスの力(笑)になりたいんですよ」

「力になりたいなら、(笑)をつけるな」

いやん。それは聞かないお約束。