The previous night of the world revolution8~F.D.~

…更に、ルレイアがダメ出しをしたのは、設備だけに留まらない。

「その…ルレイア殿。こちらも見てもらえますか?」

と言って、ルアリスは分厚い本をルレイアに差し出した。

『箱庭帝国医学概論』というタイトルの本である。

あれ…もしかして、大学の講義で使うテキストだろうか?

「授業で使う予定のテキストなんですけど…。今年作られたばかりの教科書なんです。読んでみてもらえませんか?」

あ、やっぱり…。

ルレイアは、ぺらぺらとその本を捲った。

俺は、横から盗み見させてもらった。

すげぇ…。俺にはさっぱり分からない。

でもこれって、医者には必要不可欠な知識なんだろうな。

「…どう思いますか?」

「これ、何年生のテキストなんです?」

「一年次です」

「一年でこのレベルなら、卒業するまでに12年は必要ですね」

ルレイアの毒舌が突き刺さる。

ルティス帝国の医学部は、確か6年次まであるから。

その倍も必要ってこと?…つらっ…。

「う…。そ、そんなに、ですか…?」

「ルティス帝国の高校の看護学科でも、この程度は勉強してますよ」

そうなの?

大学の医学部どころか、高校の看護学科レベル?

「それに…ざっと見たところ、記述に誤りこそありませんが、曖昧な記述は多いですね。著者自身、把握しきれてないと言いますか…」

「…」

「記載してある症例の数も少ないです。これじゃあ信憑性に欠けますよ」

「そ、そうですか…」

ルアリス自身は、それほど医学に詳しい訳ではないらしく。

テキストにダメ出しをされて、戸惑った様子であった。

…無理もない。俺だって訳分かんないし。

むしろ、マフィアの幹部なのに、これほど医学に長けているルレイアの方が異端である。

それもこれも、帝国騎士官学校時代に、一通りの医学を学んだが故である。

学歴なんか当てにならないよな。

ルレイアだって、学歴的には高卒だけど。

そこらの大学生より、遥かに頭良いんだもん。

「生半可なテキストを使うくらいなら、ルティス帝国で販売されている『猿でも分かる!初級の医学』を使った方が良いですね」

…あのシリーズ、そんな本まで出してんの?

なんつーか、偏見だとは分かってるけどさ。

猿でも分かるとか言われてる本で、医学の勉強なんかしたくないよな。 

猿は医学なんて分かんねーよ。

「ちなみに、中級の医学、上級の医学というシリーズも出ているので、学年が上がったらそちらを使うと良いですよ」

初級、とか言ってる時点で何となく察してた。
 
「そ、そうですか…。設備とテキストに関しては…もう少し考えることにします」

「えぇ、そうしてください」

ルレイアの辛口な批評が、少しでも大学の質向上に繋がることを祈るばかりである。