The previous night of the world revolution8~F.D.~

何であんなに大勢の女性(一部男性を含む)が、ルレイア・ハーレムの毒牙に引っ掛かってしまうのか。

その理由が、何となく分かったような気がする。

ターゲットを補足する、その速度が半端じゃない。

「…いるのか…?本当に…?」

「4時の方向を見てください。胸元にデカいリボンがついた、派手なピンクのドレスを着ている小娘がいるでしょう?」

「…」

ルレイアに指摘され、俺はさり気なく、時計を見る振りをして、言われた方向に視線をやった。

すると、確かにピンクのドレスを着た女性が、ソフトドリンクのグラスを持って、別の参加者と楽しげに談笑している。

あいつか…。

確かに、調査書の顔写真と同じ…ように見える。気がする。

「恐らく、あれがターゲットでしょう」

「良かった…。来てたんだな」

「そのようですね」

よし。第一関門は突破だな。

あとは、あの女をルレイアが口説き落とせれば、文句なしなんだが…。

「どうだ、ルレイア…。行けそうか?」

「ふっ、当然です。誰に言ってるんですか?あんな小娘一匹落とせないとあっては、俺はご先祖様に申し訳が立ちませんよ」

「そうか…。頼もしいが、別の意味でご先祖様に謝って欲しいな…」

「ちょっとルルシー。それどういう意味です?」

言葉通りの意味だよ。

それは良いから、気をつけて行けよ。頼むから。

「くれぐれも注意して、もし分が悪いと思ったらすぐに退くんだぞ。無茶はするな」

「分かってますって。じゃあルルシーはこの辺から見守っててくださいね」

と言って、ルレイアは余裕の笑みを浮かべて、マリーフィアのいる方に歩み寄っていった。

…ここから先は、俺は黙って見ていることしか出来ない。

パーティー会場で、何も持たずに突っ立ってんのもおかしいかなと思って。

適当に、ソフトドリンクのグラスを受け取って、目立たないように壁際に移動した。

その間に、ルレイアはマリーフィアにターゲットロックオンしていた。

お喋りが一段落したらしく、談笑していた女性達が傍を離れ、マリーフィアが一人になった隙が狙い目だった。

ルレイアは、万人を魅了する魅惑の微笑みを浮かべて、マリーフィアに話しかけた。

「ご機嫌よう。お嬢さん」

「…?ご機嫌よう」

ご機嫌ようなんて挨拶、リアルで言ってるヤツ初めて見た。

平民が言うと滑稽なだけだが、元貴族のルレイアが言うと、非常に自然な挨拶のように聞こえる。

「えぇと…失礼ですけど、あなたは?」

ルレイアの顔を知らないらしいマリーフィア。当然だ。

「あぁ、済みません。突然話しかけて…あなたがあまりに天真爛漫な、素敵な笑顔で微笑むのを見て…つい、話しかけてしまいました」

だってさ。

早速口説きにかかってるな…。

台詞だけ読んだら非常にチープと言うか、「何言ってんのお前」って感じだが。

そんなクサい台詞でも、今のルレイアが言うと、さながら少女漫画の王子様のようだった。

その証拠に、マリーフィアはドン引きするどころか。

「ま、まぁ。そんな…」

照れ臭そうに、頬を赤らめていらっしゃる。

…チョロっ…。

この仕事…思った以上に楽そうだぞ。