「名前をつけてしまうと、どうしても愛着が湧いてしまいますからね」
「…そういうことだったのか…」
生まれて間もなく死んでしまった時、少しでも悲しまずにいられるように。
敢えて名前をつけないことによって、初めから居なかった者とする…。
残酷なようだが、乳幼児期に生きられなかった子供は。
例え成長しても、その先の箱庭帝国の過酷な生存競争を生き残ることは出来なかっただろう。
生存に不可欠な取捨選択だったということだ。
それで箱庭帝国の民は、赤ん坊が生まれた時。
半年くらい生き残った、「成長出来る見込みのある」赤ん坊だけが、晴れて名前をつけてもらうことが出来る。という訳だ。
名前をつけてもらうのも大変ですね。
「その…なんて言うか…大変だったんだな、箱庭帝国も」
言葉に困っているルルシーである。
…貧民街出身のあなたが言いますか。ルルシー。
「…確かに、そういう悲しい歴史もありましたけど…。…今は医療設備を整えて、生まれて一年以内に死ぬ赤ん坊の数は、かつての10分の1以下になっています」
と、ルアリスが説明した。
簡単に言うけれど、それが簡単な道のりではなかったことは言うまでもない。
…ルアリスは口にしないが、かつて問題になっていたのは乳幼児の死亡率だけではない。
生まれても育てられないという過酷な環境のせいで、自らの子供を手にかける親も、大勢いたのだ。
あるいは、妊娠しても生まれてくる前に中絶し、初めからいなかったものにされた子供も。
それは決して、子供を殺す親が悪いのではない。
むしろ、そういう親の方がある意味で、子供のことを本当に思っているとも言える。
生まれてから飢えや貧しさで苦しんで死ぬより、生まれることなく死んでしまった方が幸せだろう、という親心なのだ。
…残酷な親心である。
そういうことが、箱庭帝国ではずっと問題になっていた。
赤ん坊を安心して産める環境を作るというのは、当たり前のことのようで、実は非常に大変なのだ。
「かつて、生まれてこられなかった子供達が、大人になって、天寿を全うするまで人生を生きられるように…。そういう国を作っていきたいんです。俺は」
ルアリスは、自分の子を愛しげに見つめながら言った。
ルアリスの娘は、大きな目をくりくりとさせて、そんなルアリスを見つめ返していた。
ふーん。微笑ましくて何よりですね。
「…それで、話を戻しますが…。箱庭帝国では昔から、親が名前をつけるんじゃないんです」
とのこと。
これも面白い文化ですよね。
まぁ、ルティス帝国でも、名付けを別の人に頼む親はいますけど。
でも、大抵は親が名前をつけるじゃないですか。
箱庭帝国ではそうじゃないんですよ。
「自分の恩人や、お世話になった人に子供の名付けを頼むのが普通なんです。だから、ルレイア殿に名付けを頼みたくて…」
ふーん、成程…。
まぁ、俺はルアリスの恩人ですからね。ふふふ。
「ちなみに、今抱いてる長女は誰に名前つけてもらったんです?」
「この子はユーレイリーに…。長い間ずっと、俺のことを支えたくれた恩人ですから」
さっき出迎えてくれた執事ですか。
「だから、下の子には是非、ルレイア殿に名前をつけて欲しいんです」
ふーむ、成程。
子供の名付けを頼まれるなんて、初めての経験ですね。
「…そういうことだったのか…」
生まれて間もなく死んでしまった時、少しでも悲しまずにいられるように。
敢えて名前をつけないことによって、初めから居なかった者とする…。
残酷なようだが、乳幼児期に生きられなかった子供は。
例え成長しても、その先の箱庭帝国の過酷な生存競争を生き残ることは出来なかっただろう。
生存に不可欠な取捨選択だったということだ。
それで箱庭帝国の民は、赤ん坊が生まれた時。
半年くらい生き残った、「成長出来る見込みのある」赤ん坊だけが、晴れて名前をつけてもらうことが出来る。という訳だ。
名前をつけてもらうのも大変ですね。
「その…なんて言うか…大変だったんだな、箱庭帝国も」
言葉に困っているルルシーである。
…貧民街出身のあなたが言いますか。ルルシー。
「…確かに、そういう悲しい歴史もありましたけど…。…今は医療設備を整えて、生まれて一年以内に死ぬ赤ん坊の数は、かつての10分の1以下になっています」
と、ルアリスが説明した。
簡単に言うけれど、それが簡単な道のりではなかったことは言うまでもない。
…ルアリスは口にしないが、かつて問題になっていたのは乳幼児の死亡率だけではない。
生まれても育てられないという過酷な環境のせいで、自らの子供を手にかける親も、大勢いたのだ。
あるいは、妊娠しても生まれてくる前に中絶し、初めからいなかったものにされた子供も。
それは決して、子供を殺す親が悪いのではない。
むしろ、そういう親の方がある意味で、子供のことを本当に思っているとも言える。
生まれてから飢えや貧しさで苦しんで死ぬより、生まれることなく死んでしまった方が幸せだろう、という親心なのだ。
…残酷な親心である。
そういうことが、箱庭帝国ではずっと問題になっていた。
赤ん坊を安心して産める環境を作るというのは、当たり前のことのようで、実は非常に大変なのだ。
「かつて、生まれてこられなかった子供達が、大人になって、天寿を全うするまで人生を生きられるように…。そういう国を作っていきたいんです。俺は」
ルアリスは、自分の子を愛しげに見つめながら言った。
ルアリスの娘は、大きな目をくりくりとさせて、そんなルアリスを見つめ返していた。
ふーん。微笑ましくて何よりですね。
「…それで、話を戻しますが…。箱庭帝国では昔から、親が名前をつけるんじゃないんです」
とのこと。
これも面白い文化ですよね。
まぁ、ルティス帝国でも、名付けを別の人に頼む親はいますけど。
でも、大抵は親が名前をつけるじゃないですか。
箱庭帝国ではそうじゃないんですよ。
「自分の恩人や、お世話になった人に子供の名付けを頼むのが普通なんです。だから、ルレイア殿に名付けを頼みたくて…」
ふーん、成程…。
まぁ、俺はルアリスの恩人ですからね。ふふふ。
「ちなみに、今抱いてる長女は誰に名前つけてもらったんです?」
「この子はユーレイリーに…。長い間ずっと、俺のことを支えたくれた恩人ですから」
さっき出迎えてくれた執事ですか。
「だから、下の子には是非、ルレイア殿に名前をつけて欲しいんです」
ふーむ、成程。
子供の名付けを頼まれるなんて、初めての経験ですね。


