The previous night of the world revolution8~F.D.~

さて、実際の挙式のムービーを見た後は。

お楽しみタイムである。

「こちら、当会場で貸し出しているドレスとタキシードになります。ご自由にご試着してみてください」

旗を持ったガイドお姉さんに連れられて、やって来たのは。

結婚式の衣装部屋である。

所狭しと、真っ白なドレスとタキシードが並んでいる。

わーお。胸が踊りますね。

「この衣装が全部真っ黒だったら、言うことなかったんですけどね」

「…あのな、ルレイア…。葬式じゃないんだから…」

シェルドニア王国は、葬式でも白を着てそうですけど。

ブライダルフェアの参加者達は、思い思いのウェディングドレスやタキシードを手に、試着を始めていた。

おっと。俺達も負けてられませんね。

「さぁルルシー。試着してみましょう」

「は…?何で俺が?」

「そうだなー。ルルシーに似合う衣装は…」

ハンガーにかけられて並べられた衣装を、何枚かじーっと吟味。

おっ。これだ。

胸元にスワロフスキービーズの洒落た飾りがついた、純白のAラインドレスである。

「これなんか、ルルシーにとっても似合うと思いま、」

「却下」

ちょっと。まだ言葉の途中なのに、何で断るんですか。

「…あ、ルルシーはマーメイドドレスの方が好きでしたか?それじゃあこっちの…」

腰に純白の大きなリボンがついた、可愛らしいマーメイドドレスを、

「却下だ」

…何で?

「…嫌いですか?ルルシーはもっとシンプルなドレスの方が好きです?」

「あのな、ルレイア。お前、何か誤解してるようだが」

ルルシーは俺の真正面に立って、ガシッと俺の両肩を掴んだ。

「ブライダルフェアに参加してるんだから、百歩譲って結婚式の衣装を試着するのは構わない」

「そうでしょう?じゃあ着てみてくださいよ」

「しかし、俺は男だ。そしてお前が今手に持ってるのはドレスだ。女物の衣装だ」

えっ?

「男はドレスなんか着ない。分かったか?」

「それは偏見ですよ、ルルシー。だってほら、あの男性カップル、ドレス着てますよ」

俺は、同じくブライダルフェアに参加している男性カップルを指差した。

「は?いや、そんな訳…。…本当だ…」

ね?言ったでしょう?

あの男性カップルは、二人共ウェディングドレスを着て、はしゃぎながら写真を撮っていた。

反対側では、逆に、女性カップルがタキシードを着てキャッキャしてるし。

どうやらシェルドニア王国の結婚式では、男性がタキシード、女性がドレス、とは決まってないようですね。

何なら女性がタキシードで、男性がドレスを着て結婚式をする、というパターンもあるのかもしれない。

いやはや。多様性って凄いですね。

固定観念を覆されますよ。