The previous night of the world revolution8~F.D.~

ーーーーー…シェルドニア王国にやって来て、およそ10日が経過した。

その日、俺はとあるチラシを手に、にゅふふな笑いが止められなかった。

「…にゅふ。にゅふふふ…」

「…」

「にゅふふふ…」

「…おい、ルレイア」

テーブルと向かい合って、何やら書き物をしていたルルシーが。

耐え兼ねたように、くるりとこちらを向いた。

「…にゅふふ…」

「おい。そのキモい笑いをやめろ」

「…にゅふ?」

「気持ち悪いぞ」

…気持ち悪い、だって?

今の聞きました?恋人が楽しそうに笑ってるのに、それを気持ち悪いって?

酷いと思いません?微笑ましいなぁ、って見守ってくださいよ。

「その胡散臭い笑い方やめろ。何か良いことでもあったのか?」

「えぇ…。実はとっても良いことがありました…」

「そ、そうか…。そりゃ良かったな…」

良いことって何?って聞いてくれても良いんですよ?

まぁ、まだ教えてあげませんけど。

これはギリギリまで隠しておこう。

ルルシーはシャイですからね。事前に知ったら、恥ずかしがってキャンセルしてしまうかもしれませんから。

当日のお楽しみってことで。

「それより、ルルシーはさっきから何をやってるんですか?」

またしてもルルシーは、何やら教科書?のようなものを見ながら、ペンをカリカリ動かしている。

またお勉強ですか、ルルシー。精が出ますね。

「ん?あぁ…。シェルドニア語の勉強をな」

とのこと。

よくよくルルシーの手元を見てみたら、シェルドニア語中級、という本が置いてあった。

成程。シェルドニア語の勉強でしたか。

「前に来た時よりはマシになってるけど、まだまだ日常会話も覚束ないからな…」

「そんなに頑張らなくても、俺が通訳しますよ?」

「それが嫌なんだよ。いつまでもルレイアに頼りっぱなしじゃ情けないからな。自分でも喋れるようにしないと…」

いやん。ルルシー素敵。

頑張る姿が格好良いですね。

「この国にしばらく滞在するなら、シェルドニア語は読み書き共にマスターしておきたいんだ」

「そうですか…。ルルシーは勉強熱心ですね」

「お前に追いつく…のはとても無理だけど、せめて足を引っ張らないようにしたいからな」

俺は、ルルシーに足を引っ張られてるなんて一度も思ったことありませんけどね。

むしろ、俺の方がルルシーの足を引っ張ってるんじゃないかと心配ですよ。

ま、それはお互い様ってことなんですかね。

…とはいえ、こうして、ルルシーは頑張っているようですけど。

その頑張り、もしかしたら無駄になる可能性が…。

…と、思っていたら。

「…ん?」

噂をすれば何とやら、俺のスマホに、ルシードから連絡が入った。