―――――…その日の夕方。
ルレイアと共に貴族様のパーティーに参加する俺は、珍しく礼装に着替えた。
「まぁ…こんなもんかな…」
姿見の前で自分の格好を確認し、次にルレイアの部屋に向かった。
「おい、ルレイア。そろそろ支度…」
「あぁルルシー。今、会いに行こうと思ってたんですよ」
「…お…。…おぉ…」
「?どうかしました?」
いや…その…ちょっと…。
部屋に入るなり、ルレイアの姿を見てびっくりした。
いつもの真っ黒な服装は変わらないのだけど、その、なんて言うか…。
「さてはルルシーさん…ルレイア師匠の美貌に惚れ直しました?」
ルーチェスが茶化すように言い、俺は思わずドキッとしてしまった。
いや、違うっての。いや違わないかもしれないけど。でも違う。
「ち、ちが…ちょっと、いつもと雰囲気違うなと思っただけだよ」
「やっぱり惚れ直したんじゃないですか」
おま、この。ルーチェス。茶化すな。
そんなこと言ったら、ルレイアがすぐ調子に乗って…。
「本当なんですか…?ルルシー、俺に惚れ直したというのは…!?」
「だから違うっつーの」
案の定、目をキラキラ輝かせてやがる。
ったく、ルーチェスの奴が余計なことを言うから。
「いつもの格好とは、ちょっと違うから…気になっただけだよ」
「あ。ルルシーは俺の『仕事着』、あんまり見たことありませんでしたね」
…仕事着、なのか?
いつもの真っ黒なスーツ…なのは変わりないんだが、そのスーツのデザインも、いつもよりシックで、上品だった。
アクセサリーも化粧も控えめで、清楚なイメージ。
…あのルレイアが「清楚」とは。一番似合わない言葉だ。
いつもの超オリエンタルな香りの香水も、今は鳴りを潜めている。
「ルレイア…お前、香水変えた?」
「えぇ。今日は珍しく、シプレーノートの香水をつけてみました」
し、しぷれー?
とにかく、いつもより上品で、落ち着いた香り。
それでいて、控えめながらもしっかり自己主張してくる。そんな香りだ。
良い匂いだな、それ。お前、もうオリエンタル香水つけるのやめて、一生それだけ使ったら?
「ちなみに、これもルレイア・ブランドの香水店の商品ですよ」
「あ、そう…」
自社製品を使って、アピールしていくスタイル。
ちゃっかりした奴だよ。本当…。
「お前、そういう控えめな格好も出来るなら、普段からそうすれば良いのに…」
「嫌ですよ。本当はもっとゴシックな格好をしたいのに、貴族様のパーティーだからと思って、必死に我慢してるんですからね」
一応ルレイアなりに、TPOを弁えた格好を心掛けているらしい。
まぁ、仕方ないよな…。裏社会の会合ならまだしも、今回は表社会の…しかも、貴族の紳士淑女が集まるパーティー。
下手に派手な格好をしたら、嫌でも悪目立ちしてしまう。
「貴族というのは、品格だの礼節だの、そういう下らない見栄の張り合いに命を掛けてる連中ですからね」
「…」
「一応、奴らに合わせてやらないといけないでしょう。気は進みませんけど」
「…そうか…」
元貴族のルレイアが言うのだから、そうなのだろう。
ルレイアと共に貴族様のパーティーに参加する俺は、珍しく礼装に着替えた。
「まぁ…こんなもんかな…」
姿見の前で自分の格好を確認し、次にルレイアの部屋に向かった。
「おい、ルレイア。そろそろ支度…」
「あぁルルシー。今、会いに行こうと思ってたんですよ」
「…お…。…おぉ…」
「?どうかしました?」
いや…その…ちょっと…。
部屋に入るなり、ルレイアの姿を見てびっくりした。
いつもの真っ黒な服装は変わらないのだけど、その、なんて言うか…。
「さてはルルシーさん…ルレイア師匠の美貌に惚れ直しました?」
ルーチェスが茶化すように言い、俺は思わずドキッとしてしまった。
いや、違うっての。いや違わないかもしれないけど。でも違う。
「ち、ちが…ちょっと、いつもと雰囲気違うなと思っただけだよ」
「やっぱり惚れ直したんじゃないですか」
おま、この。ルーチェス。茶化すな。
そんなこと言ったら、ルレイアがすぐ調子に乗って…。
「本当なんですか…?ルルシー、俺に惚れ直したというのは…!?」
「だから違うっつーの」
案の定、目をキラキラ輝かせてやがる。
ったく、ルーチェスの奴が余計なことを言うから。
「いつもの格好とは、ちょっと違うから…気になっただけだよ」
「あ。ルルシーは俺の『仕事着』、あんまり見たことありませんでしたね」
…仕事着、なのか?
いつもの真っ黒なスーツ…なのは変わりないんだが、そのスーツのデザインも、いつもよりシックで、上品だった。
アクセサリーも化粧も控えめで、清楚なイメージ。
…あのルレイアが「清楚」とは。一番似合わない言葉だ。
いつもの超オリエンタルな香りの香水も、今は鳴りを潜めている。
「ルレイア…お前、香水変えた?」
「えぇ。今日は珍しく、シプレーノートの香水をつけてみました」
し、しぷれー?
とにかく、いつもより上品で、落ち着いた香り。
それでいて、控えめながらもしっかり自己主張してくる。そんな香りだ。
良い匂いだな、それ。お前、もうオリエンタル香水つけるのやめて、一生それだけ使ったら?
「ちなみに、これもルレイア・ブランドの香水店の商品ですよ」
「あ、そう…」
自社製品を使って、アピールしていくスタイル。
ちゃっかりした奴だよ。本当…。
「お前、そういう控えめな格好も出来るなら、普段からそうすれば良いのに…」
「嫌ですよ。本当はもっとゴシックな格好をしたいのに、貴族様のパーティーだからと思って、必死に我慢してるんですからね」
一応ルレイアなりに、TPOを弁えた格好を心掛けているらしい。
まぁ、仕方ないよな…。裏社会の会合ならまだしも、今回は表社会の…しかも、貴族の紳士淑女が集まるパーティー。
下手に派手な格好をしたら、嫌でも悪目立ちしてしまう。
「貴族というのは、品格だの礼節だの、そういう下らない見栄の張り合いに命を掛けてる連中ですからね」
「…」
「一応、奴らに合わせてやらないといけないでしょう。気は進みませんけど」
「…そうか…」
元貴族のルレイアが言うのだから、そうなのだろう。


