The previous night of the world revolution8~F.D.~

普通、玉ねぎが黒くなってたら、それってカビだよな。

ちょっと取り除けば問題なく食べられるけど、カビ生えてたら誰でも「うぇっ」ってなるよな。

やはりシェルドニア人もそう思うのだろう。

他のカラフル野菜には、大勢のお客さんが群がっているけど。

この黒玉ねぎには、お客さんが全然寄り付かない。

やっぱりカビなんだって、これ。

それなのに、ルレイアは。

「ふむふむ、やっぱり卸売市場で買うと鮮度が良いですね」

とか言ってる。カビてるのに。

「じゃ、これコンテナで10ケースもらいましょうかね」

「ちょ、おまっ…!こんなカビた玉ねぎ、そんなに大量に買ってどうするんだよ…!?」

お店の人に分からないように、敢えてルティス語で尋ねた。

すると、ルレイアはけろっとして。

「これ、仕入れですから。『ブラック・カフェ』のメニューに使う材料です」

と、答えた。

あ、成程…。つまり今日のルレイアは、一般客でもあり、仕入れ業者でもあるんだな。

「それに、これはカビじゃありませんよ。元々こういう品種なんです」

「えっ?」

「こんな色ですけど、火を通すと甘くて美味しいんです。シンプルにオニオンスライスにして食べても美味しいですよ」

…マジで?

これカビじゃねーの?

でも冷静に考えたら、いや冷静に考えなくても、カビた玉ねぎなんか売るはずがない。

…ってことは…本当に、こういう品種なのか…。

…食欲そそられない色してんなぁ…。

すると、そんな俺達の会話を察したのか。

黒玉ねぎを売っているお店の人が、スライスオニオンを発泡スチロールの小皿に入れて、スプーンと共に差し出してきた。

…何これ。試食してみろってこと?

断るに断れないから、恐る恐る受け取る。

…黒っ…。

皮だけじゃなくて、果肉の部分も見事に真っ黒。

「うん。鮮度が良いから、ナマでも充分美味しいですね」

「…」

ルレイアは、何の躊躇いもなくしゃくしゃくとブラックスライスオニオンを食べていた。

…マジ?そんな平然と食べれんの?

勇気あり過ぎだろ。

仕方ないから、俺もそっとスライスオニオンを食べてみた。

「どうです?ルルシー。美味しいでしょう?」

「…!本当だ…」

マジで、普通の玉ねぎと同じ味が…いや、普通の玉ねぎより甘くて美味しい。

ナマで食べてこれほど美味しいなら、加熱したらもっと甘くて美味しくなりそうだな。

オニオンスープ…。オニオングラタンにしてもイケるな…。

黒玉ねぎだけでも充分インパクトがあるけれど。

「さて、それじゃあ次に…。おっ、あれなんかどうです?」

「ん…?…うげっ…」

ルレイアが指差した野菜…野菜じゃなくて果物なんだけど、それを見て思わずぎょっとしてしまった。

バナナである。

…真っ黒なバナナ。

緑のバナナ、黄色いバナナは知ってるけど、黒バナナって何なの。

バナナって食べ頃になると、段々皮に黒い斑点が出来てくるじゃん?

でも、この黒バナナはそういう次元じゃない。

斑点どころじゃなくて、皮が全体的に真っ黒。

中身のバナナは黄色いのかなと思ったけど、こちらにも試食が置いてあった。

黄色どころか、果肉まで真っ黒なバナナだった。

…これはやべぇ。