The previous night of the world revolution8~F.D.~

ルシードはとても有能な男だった。

突然訪ねてきた俺とルルシーの為に、翌日には、すぐ隠れ家を準備してくれた。

王都の一角にある、小さなアパートである。

以前ルルシーとルリシヤがシェルドニア王国に潜伏した時、隠れ家として使っていたアパートに似ている。

「ここだ」

ルシードが自ら、早速俺達を案内してくれた。

「ふーん…」

閑静な住宅街にあるアパートで、確かに、人目を忍んで暮らすには最適な場所である。

アパートの建物が真っ白である、ということを除けば、快適に暮らせそうですね。

「差し当たって、必要な家具は全て揃っている。必要なものがあれば言ってくれ。すぐに用意する」

至れり尽くせりですね。

とはいえ、俺もそこまで甘えるつもりはないから、その気遣いは結構だ。

「分かりました。まぁ、自分達で何とかしますよ」

「そうか」

「それより、俺達の為に何かしてくれる気があるなら、一つ頼みたいことがあるんですけどね」

「…何だ?」

ルシードが、再び警戒心をあらわにした。

失礼な。無茶振りを頼むとでも思ったんですか?

違いますよ。

「そんなに睨むのやめてもらえますか。俺達は亡命者ですよ?」

広い心を持って受け入れ、人権を保証し、丁重に扱うのが国としての礼儀ってものでしょうよ。

まぁ、俺、アシミムの肖像画ぶっ壊しちゃったんですけど。

てへっ。

「別に何も企んじゃいません。今更、シェルドニア王国と事を構えるつもりはありませんよ」

「…」

その疑わしそうな目、やめてくれませんかね。

まったく、人を疑うのは良くないと思いますよ?

俺の、この清廉で誠実な瞳が見えないんでしょうか。

やれやれ。

「良いから、これ。アシミムに渡しといてください」

俺は、アシミムへの「お願い」を記した手紙をルシードに託した。

シェルドニア王国に来るまでの、船の中で書いておいたのだ。

俺は、自分の無実が証明されるまで、このシェルドニア王国で大人しくしているつもりはない。

状況がどう転んでも困らずに済むように、打てる手は打っておかなくては。

「…?ルレイア、その手紙は…?」

突然手紙を取り出す俺に、ルルシーは怪訝そうな顔をしていた。

ルルシーにも、後で説明しますよ。

「確かにアシミムに届けてくださいね。頼みましたよ」

「…分かった」

ルシードは、渋々頷いた。

ルシードは有能ですからね。

きっと、すぐに手配してくれると思いますよ。

「俺はここで失礼する。これが部屋の鍵だ」

と言って、ルシードがアパートの鍵を手渡してきた。

そして、これ以上言うことはないとばかりに、くるりと踵を返した。

まったく、無愛想な男ですよ。

「礼儀正しさってものを知りませんね。ねぇ、ルルシー」

「…深夜に人の寝室に侵入した奴が、礼儀正しさを説くのか」

いやん。

今のは聞かなかったことにしておきますね。