…あっぶね。

さっきの、ルレイアのエロ話、聞かれてしまうところだった。

ご婦人には刺激が強いぞ。

しかし、ルレイアは。

「お。ブロテが来ましたね。あなたも俺の話を聞きたいんですか?」

「え、ルレイア卿の話?」

ちょ、おま。

「はい。自称タチの男を、後ろでしか抜けないネコにした話なんですけど」

「ネコ…猫?ルレイア卿は猫派なの?」

どうかブロテは、そのまま純粋なブロテのままでいてくれ。

「そんなことも知らないとは。さてはあなた、処女ですね。あーキモっ。処女なんて面倒臭いしキモいだけで、俺の眼中にはな、もごもごもご」

「ちょっと黙ってような、ルレイア…!」

失礼だからな。ブロテと全国の未経験の女性達に。

俺は、ルレイアの口を塞いで黙らせた。

この馬鹿の代わりに俺が謝るから、どうか許してくれ。

「ルレイア卿とルルシー卿は、本当に仲が良いんだなー。羨ましいよ」

今の俺とルレイアを見て、そんなにこやかに微笑むことが出来るとは。

あんたは、確かに帝国自警団団長の器だよ。

「…それで?ブロテ、今日は何の用だ?」

何か用があって来たんじゃないのか。

「あぁ…。退屈してないかと思って、様子を見に…」

「退屈?いや…俺は別に…」

「俺も平気ですよ。今も、ルルシーととっても楽しくおしゃべりしてましたから」

ドヤ顔のルレイア。

…お前が一方的にエロ話をしてただけなんだが?

俺、一度でも楽しそうに相槌打ったっけ?

「そっか…。それじゃ、必要なものはない?さすがに、外に出るのは厳しいけど…。室内に持ってこられるものなら、出来るだけ要望には応えるよ」

とのこと。

有り難い申し出である。

…そうだな…。

この安全な隠れ場所を貸してもらってるだけで、充分助かっているから。

他に必要なものなんてない、と言いたいところだったが…。

もし、必要なものを持ってきてもらえるなら…。

「えっと…。頼みたいものって、何でも良いのか?」

「うん。さすがに、部屋に入り切らないものは無理だけど…」

「いや、そこまでは俺もさすがに…。…それじゃあ、えぇっと…」

俺は、室内にあったメモ用紙を一枚千切って、そこにペンでさらさらと、いくつかの項目を書き記した。

…よし。こんなところで良いかな。

「手に入る範囲で良いから、これ、用意してくれないか」

「ん…?分かった。ちょっと時間かかるかもしれないけど」

「あぁ。遅くなっても構わないよ。頼む」

俺は、そのメモ用紙をブロテに渡した。

これで、しばらくの間退屈せずに済むだろう。

「?…ルルシー、今何を頼んだんですか?」

「ん?いや…大したものじゃないよ」

ルレイアに見せたら、なんて言うか…笑われそうな気がするから。

内緒にしておくつもりだった。