The previous night of the world revolution8~F.D.~

「裏社会のツテで、その盗まれたダイヤが『青薔薇連合会』に流れてきましてね…。これが発覚したら、『青薔薇連合会』は大きな罪に問われることになる」

「そんな…。盗まれたって…。…どうやって…?」

…さぁね。そこまで教えてあげる義理はありません。

精々自分で考えてください。

それに、大事なのは盗んだ方法ではない。

「盗難がバレて問題になる前に、なんとしてもカミーリア家に潜り込み、『ローズ・ブルーダイヤ』をもとの場所に戻す必要があった」

「…!だから…なの?だからこの家に…マリーフィアに近づいて…」

「その通りですよ。…分かってるじゃないですか」

そんな理由でもない限り、貴族の家になんか来るはずないじゃないですか。

今の俺は、言うまでもなく作り笑いを消していた。

偽りのルナニア・ファーシュバルではなく。

『青薔薇連合会』幹部、ルレイア・ティシェリーに戻っていた。

あぁ。本来の自分に戻るというのは、なんと気分の良いことだろう。

「今、その目的は達しました。…だから、もうこの家は用済みです」

「そんな…嘘でしょ…?嘘…。じゃあ…私に…家族だって言ってくれたのも…」

…そんな、泣きそうな顔しないでくださいよ。

まるで俺がいじめたみたいじゃないですか。

「マリーフィアは楽でしたけど、あなたは厄介でしたよ」

最初に会った時から、メリーディアだけが俺にとっては警戒対象だった。

疑うことを知らないマリーフィアと違って、この女は最初から、俺の魂胆を見抜いていた。

「あなたの警戒を解き、信頼させるにはひと芝居もふた芝居も必要で…苦労させられました」

「…」

「そんな顔しないでくださいよ。…俺個人としては、これでも一応あなたに同情してるんですよ」

俺は、涙を滲ませたメリーディアのまなじりを、そっと指で拭った。

「貴族として生まれながら、自分の居場所を見つけられない…。まるで昔の自分のようでね」

マリーフィアなんかより、ずっとメリーディアの方に好感を抱いていた。

それは紛れもない事実である。

「あなたがカミーリア家の娘ではなく、俺が『青薔薇連合会』の幹部でなかったら…あなたとお友達になれた未来も…いえ、あなたと本当に、家族になる未来もあったかもしれませんね」

「そんなの…そんなこと、今…言われたって…」

メリーディアは目にいっぱいの涙を浮かべ、裏切られた悲しみで顔を覆った。

…お気の毒。

でも、あなたは決して信じてはいけない人を信じてしまった。

それだけの話です。

「俺のことはもう忘れてください。一夜の夢のようなものだと…」

「忘れられる訳…ないじゃない…」

そうですか。

忘れられないなら、辛くても、一生覚えているしかないですね。

「じゃああなたが覚えていてください。俺は忘れます。ここにいたこと、あなたと家族だったことも…。俺の代わりに、あなたが覚えていてください」

あなたが忘れない限り、俺がこの家にいたという事実が残り続けるでしょう。

「…さようなら。メリーディアさん」



俺は、そのまま手を振って立ち去った。

失意のあまり、その場に崩れ落ちたメリーディアのすすり泣く声が聞こえてきたが。

それでも、俺は振り返らなかった。