The previous night of the world revolution8~F.D.~

俺はユリーフィア母の寝室を出て、真夜中の屋敷を歩いた。

向かう先は、勿論…カミーリア家の宝物庫だ。

ここに来た最初の晩、メリーディアと会った場所。

そこには、今夜は誰もいなかった。

暗闇の中、俺はユリーフィアの部屋からパクっ…拝借してきた小さな鍵を差し込んだ。

それから、メモ用紙に書いてあったパスワードを入力する。

指紋認証は簡単だ。眠っているマリーフィアなりユリーフィアの指紋を取ってくれば良い。

さぁ、これで開かずの宝物庫が開く。

重く、低い音がして、宝物庫の物々しい扉が開いた。

…やっと入れますね。

センサーやカメラの類がないか、細心の注意を払いながら、そっと宝物庫に侵入する。

広くて暗い宝物庫の中には、ガラスのショーケースがたくさん並べられていて。

その中に、色とりどりの大小の宝石達が飾られていた。

ここにある宝石は、カミーリア家が代々、受け継いできた貴重なものである。

見る人によっては、この宝石の煌めきに惑わされ、心を奪われるのだろうが…。

俺は、そんな御大層な宝石に興味はない。

俺が用があるのは、『ローズ・ブルーダイヤ』だけだ。

その一番大切な宝石は、宝物庫の一番奥、一番目立つところに、王様のように鎮座していた。

俺は、そっとそこに近づいた。

青いクッションの上に、『ローズ・ブルーダイヤ』のジュエリーボックスが置いてあった。

それから、俺は自分のコートのポケットを探った。

そこに入っていたのは、ジュリスさんから渡された、盗まれた『ローズ・ブルーダイヤ』のジュエリーボックス。

同じジュエリーボックスが二つ。

恐らく、盗み出した犯人が、全く同じ見た目のジュエリーボックスを用意して、こうしてすり替えたのだろう。

成程。今日に至るまで、『ローズ・ブルーダイヤ』の紛失に気づかなかった訳ですよ。

本物のジュエリーボックスを開けられるのは、マリーフィアとユリーフィアだけ。

外側だけでも同じジュエリーボックスを置いておけば、素人目から見れば、すり替えには気づかない。

見た目だけは、二つ共全く同じに見える。

だが、二つのうち一つは偽物なのだ。

そしてもう片方には、本物の『ローズ・ブルーダイヤ』が入っている。

…じゃあ、確かめてみましょうか。

俺はまず、ジュリスさんに渡されたジュエリーボックスではなく。

宝物庫に置いてあった方のジュエリーボックスを手に取った。

この複雑なからくり箱の開け方は、マリーフィアの部屋で覚えてきた。

オツムの弱いマリーフィアは、何年もかけて覚えたそうだが。

俺にかかれば、5分も読めば覚えられる。

正確な手付きで、からくり箱を開けていく。

何十もの手順を経て、ようやく。

カチッと音がして、箱が開いた。

「…!」

そのジュエリーボックスの中に、入っていたのは…。