The previous night of the world revolution8~F.D.~

「どうぞ。美味しかったなら、たくさん飲んでください」

「えぇ…いただきますわね」

マリーフィアはあっという間に、ティーカップ一杯のハーブティーを飲み干した。

…よし。飲んだな。

「ハーブティーは嫌いですの」とか言われたら、別の飲み物を淹れ直さなきゃいけないところだった。

「ご馳走様でしたわ」

「はい。全部飲んでもらえて嬉しいです」

「それは当然ですわ。折角、ルナニアさんが淹れてくれたお茶…ですもの…」

案の定、マリーフィアにはこの違法葉っぱ茶は効果覿面だったらしく。

途端に、目がとろんとしてきた。

「どうしました?」

「…ごめんなさい、わたくしったら…。折角ルナニアさんが来てくれたのに…何だか、とっても眠くなってきましたわ…」

早かったな。もう効いてきたか。

…即効性過ぎません?

「いけない…。起きてなくちゃ…」

「…良いんですよ。マリーフィアさん、眠っても」

ここぞとばかりに、俺はベッドに腰掛け、マリーフィアの身体を横たわらせた。

所謂、膝枕の形である。

「少ししたら、起こしてあげますから。…ゆっくりお休みになってください」

「ごめんなさい…。じゃあ、お言葉に甘えて…少し、眠って…」

「…寝ました?」

「…zzz…」

…寝たようだな。

早くも。ぐっすり夢の中ですよ。

やれやれ。こいつのチョロさは一級品だな。

眠ってしまったからには、もう気持ち悪い作り笑顔は必要ない。

けっ。

俺は、速攻で膝に乗せているマリーフィアの頭を下ろした。

あーキモかった。俺の膝は、いつだってルルシーだけのものなんですよ。

頭を動かしても、マリーフィアは全く起きる様子はない。

ぐっすり夢の中。素晴らしい。

まず最初に、俺はさっきまでマリーフィアが飲んでいたティーカップを手に取った。

すぐにそれを洗面室に持って行き、丁寧に流水ですすぎ、洗っては流すを繰り返した。

無論、証拠隠滅の為である。

ついでに、ティーポットに入れていた本物のハーブティーを注いで、それを再び流した。

これで、万一ティーカップを調べられたとしても、違法葉っぱ成分は検出されないはずだ。

完全犯罪、完了。

しかし、まだまだこれは序の口。

わざわざこんな手段を使ってまで、マリーフィアを眠らせたのには訳がある。

無論、昼間に話していたアレだ。

マリーフィアの部屋に入ること自体は、夫である俺にとっては容易いことだ。

しかし、さすがに夫と言えども、家探しをする訳にはいかないからな。

マリーフィアが出掛けている間にこっそり…というのも考えたが。

いつ帰ってくるか分からないし、マリーフィア以外の人物…例えば掃除に来たメイドとか…と運悪く鉢合わせしたら、大変なことになる。

そこで、このような方法を取らせてもらった。

夜の間なら、誰が訪ねてくる心配もない。

夫婦の寝室に訪ねてくる無礼は、論外ですからね。

「さーてと…」

鬼の居ぬ間に洗濯、ならぬ。

マリーフィアの寝てる間に家探し。

俺がこんなことをするのは、一体何の為か?

その理由は簡単。

昼間にマリーフィアが言っていた、『ローズ・ブルーダイヤ』の箱の開け方。

あれを探す為である。