The previous night of the world revolution8~F.D.~

しかし、ルレイアが企画した、避難訓練という名の悪ふざけは、これだけに留まらない。

「ひ、避難するべきか…?」

「い、いや。逃げ遅れてる人がいるかもしれない。見に行ってみよう」

さすがは、正義の帝国騎士。

逃げたいのを必死に堪えて、人命救助に乗り出そうとは。

「…ちっ」

帝国騎士の醜態を見たかったルレイアは、助けに乗り出そうとする彼らを見て、舌打ちをこぼしていた。

…良いじゃないか、ルレイア…。

しかし。

ここで、ルレイアが用意したトラップが炸裂する。

「う、うぅっ…。た、助けてくれ…!」

「!?」

助けに行こうと話し合う、帝国騎士達の前に。

帝国騎士の白い制服を、真っ赤に染めて。

ボタボタと血を流す脇腹を、苦しそうに片手で押さえ。

ふらふらと、覚束ない足取りで、助けを求めて呻き声をあげる…。

…仮面をつけた帝国騎士が、現れた。

その仮面を見た瞬間、俺は「あっ」と思ったが。

廊下を汚す血の海に仰天した帝国騎士達に、そんな冷静な判断を求めるのは酷というものだ。

彼らは、大量に血を流す同僚(?)を見るなり、怯えたようにぎょっとして。

しかし、それでも手を貸そうと、急いで駆け寄った。

「だ、大丈夫か…!?一体どうしたんだ、何があった?」
 
「た、助けてくれ…助け…」

血を流す帝国騎士(?)は、真に迫った掠れた声を出し。

それから、まるで息絶えたようにその場に崩れ落ちた。

「し、しっかりしろ!」

「し、止血しないと…!止血…!」

廊下を汚す真っ赤な鮮血を見て、明らかに動揺する帝国騎士達。

それでも、何とか応急処置しようと、ハンカチを取り出したり。

パニックに陥ったのか、ポケットティッシュを取り出している者もいた。
 
その大量の血、ポケットティッシュくらいじゃどうにもならないってこと、冷静に考えれば分かるはずだったが。

人間、動転すると、自分でも何してるか分からなくなるものである。

ましてや、「あいつ」の…あの真に迫った演技を見れば。

茶番だと分かっていても、「本当に大丈夫だよな?」って心配になってしまうくらいだから。

事情を知らない帝国騎士の皆さんは、そりゃもう心底パニックだろう。

…トラウマにならなきゃ良いんだけど。

「急いで、医務室に運ばなきゃ…」

「ちょっと待てよ。建物が壊されてるなら、医務室に運ぶのは危険だ」

「じゃあどうしろって言うんだよ!血が、こんなに血が出てるんだぞ!?」

「そ、そんなの俺に言われたって…!」

阿鼻叫喚。

完全に動転した帝国騎士達が、互いに理性を失って怒鳴り合っている様を見て。

「にゅっふふふ…」

「…ルレイア…お前…」

最高にご満悦な表情。

お前…完全に楽しんでるな…。

…多分、血まみれの演技をしている「あいつ」も、同じ事を考えてると思う。

すると。

「す、すぐに止血を…。…え?」

駆け寄った帝国騎士の腕を、血にまみれた「あいつ」ががっちりと掴んだ。

かと思うと、大量の出血に苦しんでいたはずの「あいつ」は、怪我をしているとは思えない俊敏な動きで起き上がり。

立ち上がりざまに、靴の踵に仕込んだスタンガンを、駆け寄った帝国騎士の首元に当てた。

バチッ、と音がした瞬間。

…ルリシヤを助けようと駆け寄った帝国騎士は、白目を剥いてその場にぶっ倒れた。

…可哀想にな。