The previous night of the world revolution8~F.D.~

「知ってるだろうが。ルーシッドだよ」

「え?ルーシッド?」

「一緒に大学通ってただろうが」

「あぁ、あのルーシッドですか」

他にどのルーシッドがいるんだよ。

「で?そのルーシッドが俺に、何の用ですか?自分の哀れな前任者を笑いにでも来ましたか」

「ち、違いますよ。その…これ、入団祝いにと思って、つまらないものですが…」

「つまらないものなら要りません」

「…」

…ルレイア。お前はいい加減にしろ。

「…ごめんな、このルレイア…本当に躾がなってなくて…。後で叱っとくから」

「あ、いえ…。大丈夫です…」

ルーシッドが差し出してくれた入団祝いの品を、俺が代わりに受け取っておいた。

…多分、毒物の類は入ってないと思うが。

警戒はしておくべきだな。

「あぁそうだ。これ、俺からもお土産です」

と言って、ルレイアは敢えて、アドルファスとオルタンスとルシェの三人を無視し。

ルーシッドに、真っ黒な紙袋を渡した。

勿論、さっき『ブラック・カフェ』で買ってきたお土産である。

「しっかり毒を仕込んでおいたので、隊長達皆さんで食べてください」

「えぇっ…?」

「あ、味は保証しますよ。とても美味しい致死毒が入ってるので安心してください」

「…えぇ…」

…もう、本当ごめん。

「嘘だよ、心配しなくても…」

「そ、そうですか…」

…まぁ、中身『ブラック・カフェ』のメニューだから。

シェルドニア産の…色々と気色悪い動物が原材料になっている。

見た目と原材料はアレだが、味は保証する。

「ルレイア、歓迎のパーティーを企画したから参加し、」

オルタンスが、横からすかさず口を挟んできたが。

「さーて。出勤したことですし、真面目に働きますかー。誰よりも立派に、模範的な帝国騎士として頑張りますよ」

完全スルーのルレイアである。

…立派で模範的な帝国騎士は、重役出勤してこねーよ。

今何時だと思ってるんだ。

「で、俺今日から何したら良いんですか?新入社員には教育係がついて、手取り足取り教えるものでしょう」

こんな尊大な態度の新入社員がいるか?

社長(オルタンス)を無視して、「さっさと自分に仕事教えろや」と居丈高に命じる新入社員が。

「そう言われても…。お前らは普通の帝国騎士じゃないからな」

顔をしかめるアドルファス。

案の定、俺とルレイアの扱いに困ってるようだな。

「え、仕事ないんですか?」

「…特には…」

「なーんだ。ルルシー、じゃあ暇潰しに、隊舎にある隊長達のパソコンを、残らず破壊して回りましょうか」

おい。大迷惑。

そして器物損壊。

「…おいオルタンス、この二人に何か仕事を与えろ。さもないと、明日にはこの隊舎が全焼しててもおかしくないぞ」

「そうか。じゃあ追って伝えるから、とりあえず二人を用意した部屋に案内してやってくれ」

「俺がかよ」

ルレイアの世話を頼まれたアドルファスは、露骨に嫌そうな顔をしたが。

断ったら、報復に何をされるか分からないからな。

「…こっちだ。ついてこい」
 
肩をすくめながら、アドルファスが俺とルレイアについてくるよう促した。