The previous night of the world revolution8~F.D.~

「…何なんだ?ルレイアに先制攻撃でもするつもりか」

もしそうなら、俺は反撃するぞ。

しかし、オルタンスは。

「ようこそ、帝国騎士団に」

攻撃どころか。

…歓迎してる、のか?これは、一応…。

よくよく見たら、廊下の壁や窓に、紙で作った飾りがべたべた貼ってある。

…何これ?

「…嫌味か?嫌がらせのつもりなのか?」

「まさか。この馬鹿オルタンスは、これで真面目にお前達のことを歓迎してるんだよ」

オルタンスの代わりに、隣にいたアドルファスが答えた。

歓迎だと?

それはそれで、嫌味たっぷりだな。

戻ってくることを歓迎するくらいなら、最初から追放なんかしなきゃ良かっただろ。

それに、俺達を待っていたのはオルタンスだけではなく。

「…ルレイア…」

「…」

ルシェまで、俺達を待ち構えていた。

俺「達」って言うか…オルタンスとルシェが待っていたのは、俺じゃなくてルレイアだけだろうけど。

俺はあくまで、ルレイアの付き添い的な扱いでしかない。

付き添いで結構。

帝国騎士団の制服を着たルレイアを、ルシェは感極まったような表情で見つめていた。

が、ルレイアはそんなルシェを、どうでも良さそうに一瞥し、すぐにそっぽを向いた。

それを見て、俺は心なしか、ホッとしてしまった。

ルレイアが本気で…帝国騎士団に戻るつもりじゃないって分かったから。

そんなことはないだろうとは思ってたけど、それでも、ここは元々ルレイアの古巣だった訳だから。

思うこともあるだろう。…俺よりも遥かに。

…しかも、オルタンス、ルシェの他にも、ルレイアを待っていた隊長がいた。

「あの、ルレイア殿…。お久し振りです」

ルーシッドである。

お久し振り、ってどういう意味かと思ったけど…。

そういや、ルーシッドは暫くの間、ルレイアと同居してたことがあるんだっけ。

その節は、ルレイアが迷惑かけて済まなかった。

それなのに、薄情なルレイアは。

「あ?誰ですかあなた」

…おい。ルアリスの時と同じアレか。

「えっ…。いや、あの…。ルーシッドです」

「ルーシッド?知りませんよ、そんな人。気安く話しかけないでください」

始まったぞ。ルレイアの年下イビリが。

すーぐ年下をイビるんだから、こいつは…。

「見てくださいよ、ルルシー。この人、俺の知り合いの振りして、馴れ馴れしく話しかけてくるんですよ。きっとこれは新手の詐欺、」

「…いい加減にしろ、馬鹿ルレイア」

「あ痛っ」

俺はペシッ、とルレイアの後頭部をはたいた。

今日もルレイアが絶好調で、ルレイアのメンタルを心配していた俺としては、非常に安心したけれど。

それにしたって、ルーシッドをイビって遊んで良い訳じゃないからな。