The previous night of the world revolution8~F.D.~

――――――…帝国騎士団の連中を、ジリジリとたっぷり待たせ。

俺とルレイアが帝国騎士団隊舎の入り口に辿り着いたのは、既に午前から午後に変わっていた。

…ルレイアに付き合わされるままに、朝っぱらから『ブラック・カフェ』に寄って。

おまけに、デザート代わりのスムージーまで飲んできたけど。

入社初日から重役出勤って、やっぱり不味いんじゃないのか?

午前じゃないんだぞ、もう。午後だぞ。

何時間遅刻してんだよ。

それなのに、ルレイアは余裕の表情で。

「いやぁ、ルルシー。社長ですね、俺達」

「…笑い事じゃないだろ…」

社長じゃないんだぞ。俺達、新入社員なんだぞ。

「どうするんだ?初日から遅刻するなんて言語道断だ、って処罰を受けたら…」

有り得なくはないだろう。元々帝国騎士団は、規律に厳しい組織なんだから…。

しかし、ルレイアはそんな俺の心配を軽く一笑に付した。

「その時は、むしろ俺がそいつに『処罰』を下してやりますよ」

「…」

…怖っ。

とんだ反抗児だな…。今に始まったことじゃないが…。

むしろ、ルレイアがこれほど余裕綽々な態度であることを喜ぶべきか。

ルレイアにとっては、因縁の、忌まわしい帝国騎士団だ。

険しい顔をして緊張しているようだったら、俺は誰が何と言おうと、ルレイアをここには連れてこなかっただろう。

こいつは、無理してる時に、それを隠すのが上手いからな。

ルレイアの表情に変化がないか、俺がしっかり見張っておかなくては…。

「こんにちはー。ルレイアですよー」

思いっきり遅刻しまくってるのに、ルレイアは堂々と、全く悪びれることなく出勤。

ふざけた態度である。

しかも、俺まで同じように、そのふざけた新入社員の片棒を担いでいるのだ。

…ないとは思うけど、もし罰を受けるなら、俺も一緒に受けるよ。

すると。

突然、ぱーんっ!という鋭く乾いた発砲音のようなものが響いた。

「ルレイアっ…!」

何処からか狙撃でもされたのかと、咄嗟にルレイアの前に出て庇ったが。

その心配は不要だった。

「お帰り、ルレイア。それにルルシーも」

そこには、クラッカーを構えたオルタンスの姿があった。

は、はぁ…?

はらはらと、クラッカーの中身が宙を舞っていた。

…普段、ルリシヤが自作した、手の込んだ香り付きのクラッカーばかりを見慣れているから。

市販されている普通のクラッカーを見ると、妙に地味だと感じてしまうな。

…なんて、感心してる場合かよ。