The previous night of the world revolution8~F.D.~

散々こっちに骨を折らせておいて。

やっぱり直前になって、「あ、復籍の件ですが、やっぱやめますw」とか言い出すんじゃないだろうな。

あのルレイアなら、有り得るぞ。

「早く戻ってこないかな?」

オルタンスは、ずっとそわそわしながら待ってる。

歓迎のクラッカーを構えて。

お前はアレか。誕生日パーティーを待ちきれない子供か?

しかも、浮かれているのはオルタンスだけではないようで。

「ここにいたのか」

「あ…ルシェ…」

ルレイアの姉であるルシェが、わざわざやって来た。

どうやらルシェも、ルレイアが来るのが待ちきれないらしいな。

「ルレイアは?まだ来てないのか」

「あぁ…まだだな…」

既に思いっきり遅刻している時間なんだが。

あいつ、今日からだってちゃんと分かってるよな?

初日から重役出勤なんて、これが通常の一般団員だったら、前代未聞の反抗的な異端分子だが。

ルレイアなら…しょうがないよな。

何もかも、「ルレイアだから」の一言でどんなイレギュラーも納得出来てしまう。

魔法の言葉だな。

更に。

「あ、アドルファス殿…。ルシェ殿とオルタンス殿も。こちらにいらっしゃったんですね」

オルタンスとルシェに加えて、ルーシッドまで登場。

皆して、ルレイアの出待ちでもしてんのか?

俺は関係ないぞ。ルレイアが来ようが来るまいが、どうでも良いからな。

俺はただ通りかかっただけだ。

しかも、ルーシッドは。

「…ルーシッド、お前それ、何持ってんだ?」

何やら、白い紙袋を手に持っていた。

「あ、これ…。一応、入社祝い…と言うか、入団祝いです。大したものじゃないんですが…」

マジかよ。

お前もオルタンスみたいに、ルレイアの入団祝いに便乗するつもりか。

「以前、ルティス帝国総合大学に潜入していた時、ルレイア殿にはお世話になったので…」

あぁ、成程そういうことか。

そういや、そんなこともあったっけ…。

その時の恩返しの意味を込めて、それで入団祝いを用意したのか。

律儀な奴だよ。ルレイアと同居中、随分振り回されて難儀しただろうに。

それはそれ、これはこれでルレイアに恩義を感じているとは。

「残念ながら、ルレイアはまだ来てないぞ」

「え、そうなんですか…。…遅いですね…」

「あぁ…」

もしかして、このまま初日からサボタージュするつもりなんだろうか。

ルレイアなら有り得る。

あるいは、こちらから連絡してみるべきなんだろうか。

いや、でも下手なことをして、ルレイアの逆鱗に触れたくないしな。

あいつが自らここに来るまで、辛抱強く待つことにしよう。