The previous night of the world revolution8~F.D.~

――――――…その頃、帝国騎士団では。

「…♪♪♪〜」

「…きっしょ…」

ルレイア・ティシェリーが、俺達のいる帝国騎士団に戻ってくる、その日。

オルタンスはご機嫌で、何やら忙しそう。

何処からか脚立を引っ張り出してきて、会議室の壁や廊下や窓に、黒い紙で作った花飾りを、ぺたぺた貼り付けていた。

…こいつ、勝手に会議室に何してんの?

大人しく部屋で仕事してんのかと思ったら。

「…おい、オルタンス」

「アドルファスか。丁度良かった。ちよっと手伝ってくれ」

冗談じゃねぇよ。誰が手伝うか。

それでも、脚立の上からオルタンスが手渡してきた、黒い画用紙を裏返してみると。

キラキラしたマーカーで、「お帰り。ルレイア」と書かれていた。

…何これ。推しの応援グッズ?

「折角ルレイアが帰ってくるから、歓迎会を開こうと思ってな」

キラキラマーカーと同じくらいキラキラした目で言われた。

あ、そう…。

あまりにもオルタンスが嬉しそうだから、俺としては何も言えない。

「ルレイア、って言うか…。ルルシーとかいう幹部もセットらしいけどな…」

ルレイアが帝国騎士団に復帰する直前になって、ルレイアから直接要請されたのだ。

ルルシーという、件のルレイアの相棒も一緒に、と。

何か企んでるんじゃないかと訝ったが、オルタンスはけろっとして、二つ返事で了承した。

…まぁ、ルレイアとルルシーを引き離すような真似をしたら、闇討ち不可避だからな。

下手なことは出来ない。

それに、ルルシーという幹部は、ルレイアの相棒とは思えないほど常識人みたいだし。

むしろセットで戻した方が、ルレイアの暴走を止めてくれるんじゃないか?という希望的観測もある。

ルルシーの方も、昔ルキハという名前で帝国騎士団に所属していたことがある、という経緯から。

復籍するのは、それほど面倒な手間ではなかった。

で、今日はそんな二人が帝国騎士団に戻ってくる日なのだが。

「…来ねぇな、あいつら」

時刻は、既に午前11時近くになっている。

あれ?今日からだよな?

一向に出勤してくる気配がないんだが、もしかして初日からボイコットしてるんじゃないよな?