The previous night of the world revolution8~F.D.~

…何だ。惚れたか?

「どうしました?」

「あ、いえ…。そのお洋服、何処かで見たことがありますわね…」

おいおい。ボケてるつもりか。

「見たことがあるも何も、帝国騎士団の制服ですよ」

「あぁ、言われてみれば…確かにそうですわね。…でも、どうしてルナニアさんが帝国騎士団の制服を…」

「お忘れですか?俺、今日から帝国騎士団に復帰するんですよ」

貴様の母親が、勝手に決めたからこうなってるんですよ。

全く、良い迷惑だ。

「そういえば…。今日からだったんですのね」

「えぇ。記念すべき初出勤日です」

まぁ、二回目なんですけどね。

再出勤日と言ったところか。

「そうなんですの…。残念ですわ。わたくし、今日はルナニアさんとショッピングに行こうと思ってましたのに…」

それは残念だったな。

つーか、お前はショッピングの前に、大学に行って授業を受けろ。

「済みません、今度のお休みの日に一緒に出掛けましょう」

「…仕方ありませんわね。頑張ってくださいな」

そう言って、マリーフィアはわざとらしく、俺の頬にそっとキスをした。

新妻が、出勤する夫に行ってらっしゃいのキスをするかのように。

気色悪っ。

これがルルシーだったなら、軽く敵対勢力を一掃するくらいのやる気が出るのになぁ…。

マリーフィアじゃ、げんなりするだけで、むしろ元気がマイナスですよ。

夜を共にして以来、マリーフィアとの距離がぐっと近づいた気がする。

俺としては、内心吐き気を催しているが。

それでも、顔だけはにっこりと微笑んでみせた。

「ありがとうございます、マリーフィアさん。行ってきます」

「えぇ。行ってらっしゃいませ」

笑顔で手を振るマリーフィアに、俺もまた笑顔で答え、自室を出た。