The previous night of the world revolution8~F.D.~

「はぁ…」

恋愛イベント満載の人生ゲームを楽しむ仲間達を、俺は溜め息をつきながら眺めていた。

よそでやれ、と言いたいのは山々だが。

言ったところで、素直に出ていく奴らじゃない。

…それに、むしろこいつらが部屋の中で騒いでくれている方が、気が紛れて良い。

アリューシャに狙撃を習うなど、普段やらないことをやって気を紛らわせたりもしたけれど。

やっぱり、こうして仲間達が集まっているのを見ると。

無意識に、そこにルレイアの影を探してしまう。

…ルレイア。

あいつのことを考える度に、重苦しい気分になる。

大丈夫だろうか。ルレイアは…。

今頃何をしてるんだろう?カミーリア家で、居心地の悪い思いをしてなければ良いのだが…。

…と、思っていたその時。

「…ん…?」

俺のスマホに、着信音が鳴り響いた。

誰だよ、と思いながらスマホを手に取り、その画面に映し出された名前を見るなり、俺はがばっと立ち上がった。

いや、別に立ち上がる必要はないはずなんだけど。つい。

「お、おぉ?どうしたルル公。いきなり立ち上がって」

「ルルシー先輩も、人生に参加するか?飛び入り参加OKだぞ」

「あ、大丈夫ですよ。心配しなくても、この人生ゲームは同性結婚も出来ますから。僕やルルシーさんみたいな性的マイノリティにも配慮した、素晴らしいボードゲーム、」

「お前ら、ちょっと黙ってろ」

特にルーチェス。お前は黙れ。

誰がマイノリティだって?それはお前だけだ。

俺はノーマルだよ。

って、そんなことどうでも良いのだ。

「どうしたの、ルルシー。ルレイアから電話?」

察しの良いアイズが、俺にそう聞いた。

俺がこれほど過剰に反応する相手は、ルレイアしかいない。

「あぁ、そうだ」

「…!本当?ルレイアから?何かあったのかな」

ルレイアからの電話と聞いて、シュノも反応した。

それは分からない。今から聞く。

「良いか、お前らちょっと黙っててくれよ」

改めてそう言い聞かせてから、俺は宝物でも扱うように、慎重に通話ボタンを押した。

「も、もしもしっ…」

『やっほー、ルルシー。ルレイアですよー』

電話の向こうから聞こえてきた、親の声より聞き慣れたルレイアの声に。

俺は、思わず安堵の溜め息をつきそうになった。

…良かった。この間延びした口調、何か不測の事態が起きたとか、そういう訳じゃなさそうだ。

「ルレイア…。ルレイアなんだな…?」

『えぇ、勿論。あなたのルレイアですよ』

「そうか…。良かった…」

久し振りにルレイアの声を聞いた。

電話越しなのが非常に残念だけど、でも確かにルレイアの声だ。

それだけで、心底ホッとするのだから…我ながらチョロい。