The previous night of the world revolution8~F.D.~

「散々借りっぱなしだったから、たまには、こちらが『青薔薇連合会』の為に骨を折るべきなんじゃないかと思ってな」

「それで…ルレイアを帝国騎士団に受け入れようって?」

こくり、と頷くオルタンス。

…成程。

一応、オルタンスなりに真面目に考えてたんだな。

「そうだったのか…。俺はてっきり、お前がルレイアに会いたいから、戻ってこさせようとしてるのかと思ったよ」

「そうか。まぁ間違ってはいないな。本音の8割はそれだ」

おい。素直に感心させたままでいさせてくれよ。

「俺はルレイアに会えるし、『青薔薇連合会』に借りも返せる。一石二鳥じゃないか?」

それっぽく言ってるが、それ、お前がルレイアに会いたいだけでは?

だが、オルタンスの言っていることも間違いではないし…。

「『青薔薇連合会』への借りだと…?そんなもの、我々が考える必要はない」

「いや、でも…。逆にルレイアに脅されたらどうするんだ?これまでの借りを返せって…」

「それとこれとは、話は別だ」

「別ではないだろ…」

強固に反対するアストラエアと俺とで、危うく話し合いが暗礁に乗り上げたところ。

「…あの…それでは、折衷案として…。ルレイア殿を、特別な立場で受け入れるのはどうでしょう?」

ルーシッドが片手を上げて、そう提案した。

「…特別な立場?」

って、どういうことだ?

「ですから…ルレイア殿の為に、特例的なポジションを用意するんです。例えば、隊長は隊長でも、特務隊の隊長、とか…」

「…特務隊…」

…そんなもの帝国騎士団にはないが。

だが、特例的に「特別任務隊」を結成したことなら、過去にもある。

その昔、ルティス帝国に自然災害が起きた時。

一時的に人手の足りなくなった帝国騎士団は、既に定年等の理由で退職した元帝国騎士達を集め。

帝国騎士としての最低限の権利を与えられ、特別任務隊と称して召集されたことがある。

要約すると、「人手不足なので、本来帝国騎士じゃない人を集めて、一時的に権利を与えて帝国騎士として働いてください」ってことだ。

勿論給料は与えられるし、休暇を取る権利もある。

召集されている間は、自らを帝国騎士と名乗ることを許されるのだ。

このケースを踏襲すれば、ルレイアを帝国騎士に任命することも出来なくはない…か?

「成程…。一考の余地はあるな…」

ルレイアも当然、過去に実施された「特別任務隊」制度については知っているはず。

自分がその立場に置かれても、文句はないはずだ。

特別隊だろうが何だろうが、帝国騎士であることに変わりはないのだから。

…帝国騎士に戻ることを、ルレイア自身が承知しているなら、の話だが。

そこのところ、どうなんだろうな…。

「よし、それなら決まりだな。ルレイアを特別任務隊の隊長として迎えよう」

即断即決のオルタンスである。

…お前だけは本当に、ルレイアを帝国騎士に戻すことに超前向きだな。

かつてルレイアを帝国騎士団から追い出した張本人が。皮肉な話じゃないか。