The previous night of the world revolution8~F.D.~

…百歩譲って。

「…ルレイアが『青薔薇連合会』から足を洗って、表社会の人間に戻った上で帝国騎士団に復帰するなら、受け入れてやれば良いと思うが…」

『青薔薇連合会』の幹部という肩書きを捨て。

ルレイア・ティシェリーじゃなく、ルシファーとして帝国騎士団に戻ってくるなら。

その時は、俺達も喜んでルシファーを帝国騎士団に迎え入れる。

…でも。

「そうじゃないんだろ?ルレイアはあくまで、ルレイアのままなんだろ?」

『青薔薇連合会』の幹部、ルレイア・ティシェリーとして帝国騎士団に戻ろうとしているなら。

それは、受け入れる訳にはいかない。…さすがにな。

「マフィアの幹部を帝国騎士に、しかも隊長格に迎えたなんて前例を作ってしまったら、後々、後世の帝国騎士達の頭痛の種になるぞ」

一度でもそのような「例外」を作ってしまったら。

このたった一度の前例のせいで、この先ずっと苦しむことになるだろう。

…俺個人としての意見では、ルレイアを迎え入れることに異論はないんだけどな。

ユリギウスやアストラエアは、露骨にルレイアを嫌悪しているようだが。

俺は別に、あいつを恨んでる訳じゃないからな。

「…私も、アドルファスの意見に賛成だ」

ルシェが、ようやく重い口を開いた。

…そうかい。

「あいつは…ルレイアは、闇の中に自分の居場所を見つけた。そんなルレイアを、今更ここに戻すのは…それは、私達の傲慢だ」

本当は、今すぐにでもルレイアに戻ってきて欲しい癖に。

帝国騎士団副団長として、反対意見を口にしない訳にはいかない。

そんなルシェの心情を思うと、思わず気分が悪くなる。

「…!そんな…皆、ルレイアが戻ってくることに反対なのか…」


「…」

「…合法的に、ルレイアと遊びに行けると思ったのに…」

皆の反対意見を聞いて、オルタンスは露骨に、しょぼーんとしていた。

…あのな、オルタンス。

仮にルレイアが戻ってきたとしても、多分お前と遊んではくれないと思うぞ。

「俺達は真面目に話してるんだよ。お前も真面目に考えてくれないか」

「考えてるぞ、真面目に。俺はいつだって真面目だ」

嘘をつけ。

思いっきりふざけてたじゃないか、今。

「皆が反対するのも分かる。だが、ここでルレイアを受け入れて、これまでの借りを少しでも返そうと思ったんだ」

「…」

本当に突然真面目に話し始めたから、反応に困る。

「これまでの借り…?」

「いくつもあるだろう?これまで俺達は、何度も『青薔薇連合会』に助けられたからな」

…まぁ、そうだな。

直近だと…ルティス帝国に共産主義の波が押し寄せた時。

あの時、あわやルティス帝国に革命が起きるところだったのを、ルレイア達が身を張って、未然に防いでくれた。

あの一件以外も、俺達は何かと、『青薔薇連合会』に借りを作っている。

…不本意だけどな。全部。