The previous night of the world revolution8~F.D.~

カミーリア家、つったな。

言わずもがな、ルティス帝国上級貴族の家柄の一つだ。

カミーリア家と言えば…昔から国内の鉱山の採掘権を所有し、宝石を売買する生業をしてきた…。

確か、カミーリア家の宝物庫には、『ローズ・ブルーダイヤ』なんて御大層な名前の、青い宝石が眠っているとか。

俺は見たことないし、何なら、カミーリア家が家の威信を守る為に流した都市伝説だと思っている。

そして、ルレイアと言えば…先日、ウィスタリア家に戻って、しかもその後、カミーリア家の次女と結婚したとか…。

…まさか。

「…貴族に戻るだけじゃなくて、今度は帝国騎士団にも戻ってくるってことか?」

「あぁ、そうだ」

…やっぱり、そういうことなのか。

…正気か?

ルレイアも…オルタンスも、ルシェも。

「ルレイアが帝国騎士団に戻ってくるなんて、何年ぶりだろうな。実に楽しみだ。歓迎パーティを開っ、」

「…お前、それ本気で言ってるのか?」

もしそうだとしたら、俺はお前の神経を疑うぞ。

円満退職した元社員が以前の職場に戻ってくる。とは訳が違うんだよ。

「俺はいつだって本気だが」

「あぁそうか。お前の冗談は笑えないな」

「…アドルファス、何を怒ってるんだ?」

何を怒ってる?何を怒ってるだって?

…当たり前だろうが。

「お前、自分がかつてルレイアに…いや、ルシファーに…何をしたのか忘れたのか?」

当時帝国騎士団四番隊隊長だったあいつを、ローゼリア元女王暗殺未遂事件の犯人に仕立て上げ。

無実の罪で汚名を着せ、あいつを身一つで帝国騎士団から、そして実家のウィスタリア家からも追い出した。

オルタンスは、あいつが冤罪だということを知っていながら。

王族の名誉、なんてクソッタレなものを守る為に、ルシファー一人に全ての責任を背負わせたのだ。

そして、絶望したルシファーはルレイアとなり、『青薔薇連合会』の幹部となった。

あいつの人生を狂わせた元凶が。

どのツラをさげて、また帝国騎士団に歓迎するというのだ。

ルレイアもルレイアだ。一体何を考えて、自分を裏切った組織に戻ろうとしてるんだ?

「忘れてはいない。むしろ、そのことを後悔しているからこそ、ルレイアを再び帝国騎士団に迎え入れたいと思ってるんだ」

「お前…!どの口で…」

「それに、これはカミーリア家の当主、ユリーフィア・レーヌ・カミーリアの頼みだ。自分の娘婿を帝国騎士団に戻してくれ、とな」

「…」

カミーリア家の当主に頼まれたから、ホイホイOKしたってことか?

…果たして、それはルレイアの了承を得た上でやったことなのか…?

目を白黒とさせていると、我に返った他の隊長達が口々に声を上げた。

「…冗談ではない…!」

「帝国騎士団団長ともあろう者が、何を血迷ったことを…」

九番隊のユリギウスと、五番隊のアストラエアが言った。

全くだ。もっと言ってやってくれ。