The previous night of the world revolution8~F.D.~

で、翌日。

マリーフィアとの約束通り、俺は久し振りにルティス帝国総合大学に行き。

顔見知りと鉢合わせしないよう、慎重に講義室に向かった。

当然だが、周囲の学生は知らない者だらけだった。

まぁ、俺が以前所属していた学部とは違いますからね。

歴史文学部は、教育学部とはキャンパスの場所が違うみたいですし。

お陰で、顔見知りに会ってバレることはなかった。

が、俺が周囲の学生にとって、見慣れない顔であることは言うまでもない。

下手にびくびくして注目を集めてしまったら、「あんなヤツいたっけ?」と不信に思われること必至。

それだけは避けなければならない。

だが、俺はこんな下らないことで、オタオタ怯えたりはしない。

こういう場面では、堂々としていることが一番の変装だって、ルリシヤも言ってただろう?

「自分も学生ですが何か?」と胸を張って、堂々と席についた。

講義の内容は、このルティス帝国の文化の歴史について。

どれも大した内容じゃなくて、わざわざ必修講義にする必要はない気がする。

下らねー、と思いながら聞いていると。

「それじゃあ…次の質問は…」

黒板に板書をしていた教授が、くるりとこちらを振り向くなり。

当てられたくない学生達は、さっと視線を逸らした。

お陰で。

「はい、じゃあそこの君」

唯一、視線を逸らさなかった俺が、教授に指名された。

良い迷惑ですよ。全く。

「あれ?そこの君、よく見たら全く見覚えないけど誰?」とか言われたらどうするんですか。

しかし幸いなことに、御歳を召したヨボヨボ教授は、俺どころか、他の学生の顔もちゃんと覚えていないようで。

「ルティス歴874年に、アシスファルト帝国から伝わった新しい文化の流派の名前は?」

そんなこと簡単だ。小学生でも分かる。

「第二次アシスファルト・慎重派です」

「よろしい。では、その特徴は?」

「色彩をあまり使わない素朴な色使いで、繊細で洗練された絵画、彫刻、焼き物などの芸術品が多く作られたことです」

「大変結構。よく勉強してますね」

お宅の学生じゃないですけどね。俺。

褒められちゃいましたよ。部外者なのに。

講義の後、リアクションペーパーを書かされたが。

ちゃんと、マリーフィアの名前を記入しておいた。

それっぽいリアクションも書いておきましたよ。

「教授は今回〇〇という画家については触れませんでしたが、〇〇も第二次アシスファルト・慎重派の代表的な芸術家に含まれると思う」とか。

「同時期に庶民の間で密かに流行した、〇〇という庶民出身の作曲家が中心となった、第一次ルティス・優美派の芸術作品にも触れて欲しい」とか。

講義への出欠席を登録する出席カードも、ちゃんとマリーフィアのものを提出。

講義が終わって、講義室を出る段階に至っても、誰にもバレなかった。

いやはや、堂々としているって無敵ですね。

ついでだから、懐かしの学食に立ち寄って、本日の日替わりランチを食べて帰りました。

任務完了。