その後、マリーフィアとユリーフィア母が動く気配がしたので。
俺は立ち聞きをやめ、急いで先回りして、自分の部屋に戻った。
その直後に、マリーフィアが俺のもとにやって来た。
「ルナニアさん、良かった。ここに居たんですのね」
「えぇ…まぁ…」
嘘ですけどね。
本当は、廊下の影に隠れて立ち聞きしていました。
「突然ごめんなさい、実はルナニアさんにお願いしたいことがあって…」
知ってる。
「お願い?…何ですか?」
分かっていながら、俺は今初めて聞いたかのように振る舞った。
あー、辛い。
「実は…明日の大学の講義のことなんですけど…」
と切り出して、マリーフィアは頼み始めた。
曰く、明日大学で必修科目の講義があるのだが。
明日は、貴族仲間のお嬢様友達と、一緒にお買い物に出かける予定があって。
そちらを優先したいから、代わりに講義に出席して、所謂代返を頼みたい、と。
ついに言いましたね。こんな恥知らずな要求を。
知ってますよ。さっき立ち聞きしてましたから。
姉のみならず、夫である俺にまでそんな頼み事をしてくるとは。
俺に片棒を担がせようとは、良い度胸です。
「…という訳ですの。ルナニアさん、お願いする訳にはいきませんかしら」
駄目に決まってるだろう、この馬鹿女。
代返しても良いかどうか、大学の事務局に聞いてみろ。そして説教されてしまえ。
大学規則を読んだことないのか?「代返ダメ。絶対」って書いてあっただろ。
バレたら自分だけの問題じゃないって分からないのか?頼みを引き受けた俺まで巻き添え食らうことになるんだぞ。
友達の約束と大学の必修単位と、どっちが大切なんだよ。
…等々、軽く言いたいことがこれだけ浮かんできたが。
残念ながら、俺には言えない。
言ってはいけないのだ。…マリーフィアのご機嫌取りが、俺の仕事だからな。
…ちっ。
こうなったら、嫌でも引き受けるしかないだろう。
「分かりました。それくらいなら、お安い御用ですよ」
内心舌打ちしていながら、笑顔でそう答えなければならない悲しみよ。
お安い御用な訳があるか。
「まぁ…。本当に?ルナニアさんは、やっぱり優しいですわね。お姉様とは大違いですわ」
扱き下ろされてるメリーディアが気の毒。
俺までマリーフィアと同類に思われるんだろうな…。嫌で仕方ないですが、こればかりはどうしようもない。
「じゃ、明日宜しくお願いしますわね。あ、そうだ。ちゃんとお土産も買ってきますから、安心してくださいな」
こいつは安心という言葉を履き違えている。
こうして、俺は明日、代返の片棒を担がされることになった。
…もしバレて責められたら、マリーフィアに脅された、って言おう。
俺は立ち聞きをやめ、急いで先回りして、自分の部屋に戻った。
その直後に、マリーフィアが俺のもとにやって来た。
「ルナニアさん、良かった。ここに居たんですのね」
「えぇ…まぁ…」
嘘ですけどね。
本当は、廊下の影に隠れて立ち聞きしていました。
「突然ごめんなさい、実はルナニアさんにお願いしたいことがあって…」
知ってる。
「お願い?…何ですか?」
分かっていながら、俺は今初めて聞いたかのように振る舞った。
あー、辛い。
「実は…明日の大学の講義のことなんですけど…」
と切り出して、マリーフィアは頼み始めた。
曰く、明日大学で必修科目の講義があるのだが。
明日は、貴族仲間のお嬢様友達と、一緒にお買い物に出かける予定があって。
そちらを優先したいから、代わりに講義に出席して、所謂代返を頼みたい、と。
ついに言いましたね。こんな恥知らずな要求を。
知ってますよ。さっき立ち聞きしてましたから。
姉のみならず、夫である俺にまでそんな頼み事をしてくるとは。
俺に片棒を担がせようとは、良い度胸です。
「…という訳ですの。ルナニアさん、お願いする訳にはいきませんかしら」
駄目に決まってるだろう、この馬鹿女。
代返しても良いかどうか、大学の事務局に聞いてみろ。そして説教されてしまえ。
大学規則を読んだことないのか?「代返ダメ。絶対」って書いてあっただろ。
バレたら自分だけの問題じゃないって分からないのか?頼みを引き受けた俺まで巻き添え食らうことになるんだぞ。
友達の約束と大学の必修単位と、どっちが大切なんだよ。
…等々、軽く言いたいことがこれだけ浮かんできたが。
残念ながら、俺には言えない。
言ってはいけないのだ。…マリーフィアのご機嫌取りが、俺の仕事だからな。
…ちっ。
こうなったら、嫌でも引き受けるしかないだろう。
「分かりました。それくらいなら、お安い御用ですよ」
内心舌打ちしていながら、笑顔でそう答えなければならない悲しみよ。
お安い御用な訳があるか。
「まぁ…。本当に?ルナニアさんは、やっぱり優しいですわね。お姉様とは大違いですわ」
扱き下ろされてるメリーディアが気の毒。
俺までマリーフィアと同類に思われるんだろうな…。嫌で仕方ないですが、こればかりはどうしようもない。
「じゃ、明日宜しくお願いしますわね。あ、そうだ。ちゃんとお土産も買ってきますから、安心してくださいな」
こいつは安心という言葉を履き違えている。
こうして、俺は明日、代返の片棒を担がされることになった。
…もしバレて責められたら、マリーフィアに脅された、って言おう。


