The previous night of the world revolution8~F.D.~

その後、マリーフィアとユリーフィア母が動く気配がしたので。

俺は立ち聞きをやめ、急いで先回りして、自分の部屋に戻った。

その直後に、マリーフィアが俺のもとにやって来た。

「ルナニアさん、良かった。ここに居たんですのね」

「えぇ…まぁ…」

嘘ですけどね。

本当は、廊下の影に隠れて立ち聞きしていました。

「突然ごめんなさい、実はルナニアさんにお願いしたいことがあって…」

知ってる。

「お願い?…何ですか?」

分かっていながら、俺は今初めて聞いたかのように振る舞った。

あー、辛い。

「実は…明日の大学の講義のことなんですけど…」

と切り出して、マリーフィアは頼み始めた。

曰く、明日大学で必修科目の講義があるのだが。

明日は、貴族仲間のお嬢様友達と、一緒にお買い物に出かける予定があって。

そちらを優先したいから、代わりに講義に出席して、所謂代返を頼みたい、と。

ついに言いましたね。こんな恥知らずな要求を。

知ってますよ。さっき立ち聞きしてましたから。

姉のみならず、夫である俺にまでそんな頼み事をしてくるとは。

俺に片棒を担がせようとは、良い度胸です。

「…という訳ですの。ルナニアさん、お願いする訳にはいきませんかしら」

駄目に決まってるだろう、この馬鹿女。

代返しても良いかどうか、大学の事務局に聞いてみろ。そして説教されてしまえ。

大学規則を読んだことないのか?「代返ダメ。絶対」って書いてあっただろ。

バレたら自分だけの問題じゃないって分からないのか?頼みを引き受けた俺まで巻き添え食らうことになるんだぞ。

友達の約束と大学の必修単位と、どっちが大切なんだよ。

…等々、軽く言いたいことがこれだけ浮かんできたが。

残念ながら、俺には言えない。

言ってはいけないのだ。…マリーフィアのご機嫌取りが、俺の仕事だからな。

…ちっ。

こうなったら、嫌でも引き受けるしかないだろう。

「分かりました。それくらいなら、お安い御用ですよ」

内心舌打ちしていながら、笑顔でそう答えなければならない悲しみよ。

お安い御用な訳があるか。

「まぁ…。本当に?ルナニアさんは、やっぱり優しいですわね。お姉様とは大違いですわ」

扱き下ろされてるメリーディアが気の毒。

俺までマリーフィアと同類に思われるんだろうな…。嫌で仕方ないですが、こればかりはどうしようもない。

「じゃ、明日宜しくお願いしますわね。あ、そうだ。ちゃんとお土産も買ってきますから、安心してくださいな」

こいつは安心という言葉を履き違えている。

こうして、俺は明日、代返の片棒を担がされることになった。

…もしバレて責められたら、マリーフィアに脅された、って言おう。