The previous night of the world revolution8~F.D.~

レポートの件から、一週間も経っていないある日。

その日は、別に家探しをしていた訳でも、マリーフィアを探していた訳でもないのだが。

屋敷の中を歩いていると、食堂の前を通りかかった時、不意に揉めているような声が聞こえてきた。

「…だから、お願い。お姉様」

「駄目よ。これで何度目だと思ってるの。私は協力出来ないわ」

…この声は。

俺はこっそりと、忍び足で揉めている声の方に向かった。

すると、俺の思ったとおり。

「そこを何とか…大事な約束ですの」

「ちゃんと話せば理解してくれるわ。友達なんでしょう?」

「友達だからこそですわ。ずっと前からの約束ですから、断る訳にはいきませんの」

「だったら、単位を落とすしかないわね」

「お願いしますわ、お姉様…」

マリーフィアと、姉のメリーディアである。

またしても、マリーフィアはメリーディアに何かを頼んでいるようだった。

…今度は何だ?あの懲りない女…。

単位がどうとか言ってるから、また大学関連の話か。

気配を消し、物陰から隠れて見ていると。

今度は、そこにまた新たな人物がやって来た。

「一体何の騒ぎですの?」

「あっ、お母様…」

ユリーフィア母が乱入。

さて。傍から見ている分には、面白くなってまいりました。

「お母様、わたくし、お姉様にお願い申し上げてたんですの」

渡りに船とばかりに、母親に訴えるマリーフィア。

「お願い?何のお願いですの?」

「明日の大学の必修講義に、わたくしの代わりに出席して欲しいって」

まさかの、代返要求。

大罪人ですよ、この女。

大学を何だと思ってるんですか。レポートを人に書かせたかと思ったら、今度は講義に代わりに出席しろと。

そんなに講義に出たくないなら、もう大学やめたら?

そんなんで学位取得しても、何の成果にもならないだろうに。

分かってるか?代返なんて、バレたらマリーフィアのみならず。

代返を引き受け、片棒を担いだメリーディアまでもが、責任を問われることになるんだぞ。

ましてや、メリーディアはルティス帝国総合大学の学生じゃないのに。

もし、部外者が学内に紛れ込んで、勝手に講義室に潜り込んだなんてことが大学側に知られたら。

それこそ、警察沙汰になってもおかしくない。

レポートを代筆してくれ、というお願いとは、訳が違う。

しかも。

「どうしてなんですの?マリーフィア。明日は学校には行けないの?」

「はい。わたくし、明日はお友達とお買い物に行く約束をしてるんですの」

これが、代返の動機。

…聞いたか。おい。