The previous night of the world revolution8~F.D.~

「何とか書き終えたんですけど…これで良いか、確認してください」

俺は、印刷したばかりのレポートをマリーフィアに手渡した。

「あぁ…。良いんですのよ、何でも。書いてくれさえすれば…」

マリーフィアは生返事で、受け取ったレポートを軽く眺め。

よく読みもせずに、そのままファイルにしまった。

おい。俺の力作だぞ。読め。

「ありがとうございました、助かりましたわ」

「はい」

「…それでルナニアさん、これを見てくださいな。とっても可愛らしいドレスで…」

有り難みがないどころか、感謝の気持ちさえ皆無とは。

人様にレポートを10枚も書かせておいて、そんな軽い調子で「ありがとうございました」とは。

それだけで済ませるつもりか?おい。留年を回避したんだぞ。

人によっては、土下座して感謝するところだろう。

貴族特有のアレだな。

人が自分に尽くすのが当たり前、という感覚。

相手が自分と同じ人間であることを、理屈として理解はしていても、実感はしていない。

控えめに言って最低のクズですよ。

こういう身の程を弁えない貴族がいるから、貴族に対する印象が悪くなるんだ。

そりゃ貴族という種族は、いつだって救いようのないクズばかりだけども。

めちゃくちゃムカつくから、横っ面張り倒してやりたかったのだが。

そんなことをする訳にはいかないので、俺は敢えて笑顔を浮かべた。

はー。ストレスが溜まる。

「そうですか。とても可愛いですね」

「そうでしょう?そうでしょう?ルナニアさんに褒めてもらって嬉しいですわ」

あっそ。

買ってきたばかりの洋服の山に囲まれて、ほくほくしていたマリーフィアだが。

次々に紙袋の中身を開けて、不意に手を止めた。

「…あ、そうだ。ルナニアさんにもお土産があるんですのよ」

あぁ、そういやそんなこと言ってましたね。

自分の買い物を散々見せびらかした後で、俺へのお土産。

俺に留守番させて、留年のかかったレポートまで押し付けたんだから。

そりゃもう、さぞかし素晴らしいお土産を買ってきてくれたんでしょうね?

南の島の別荘とか。

しかし。

「はい、ルナニアさん。ケーキですわ」

まさかのケーキ。

しかも、ホールケーキじゃなくてショートケーキ。それが二切れ。

「ルナニアさんと一緒に食べようと思って、二つ買ってきたんですの」

一切れは自分の分らしいので、俺へのお土産はショートケーキ一つだけである。

自分は散々買い物しておいて?

ケチくさっ…。

しかも、何でショートケーキなんですか。俺は白いケーキなんて嫌いです。

せめてチョコレートのケーキが良かった。あれなら、まだ目に優しい。

こんな白くてちっちゃなケーキの為に、俺は頑張ってレポートを書いたんですか?

それでも、お土産があるだけマシなのかもしれない。

「…マリーフィアさん。メリーディアさんには?」

「え?」

何でそこで姉の名が出てくるのか、とばかりに首を傾げるマリーフィア。

その仕草、気持ち悪いからやめろ。