The previous night of the world revolution8~F.D.~

…おっと。

ぱちっ、と部屋の電気がついた。

そこに立っていたのは、険しい顔をした若い女。

…見たことのない顔だ。

「そこで何してるの?」

その女は、再度俺を睨むように尋ねた。

まさか、見咎められるとは。

想定外の事態だが、この程度で狼狽えるのは二流ですよ。

万が一、家探し中に誰かに見つかったらどう対応するか、ちゃんと考えてある。

俺は、何も疚しいことなんかないとばかりに、にっこりと微笑んだ。

「済みません、こんな夜中に…。喉が渇いたので、お水をもらおうと思って…。キッチンを探してたんですけど、場所が分からなくて」

すっとぼけ。

あらかじめ台詞を用意しておいて良かった。

「それで、こんなところに来るの?キッチンがこんなところにあるとでも?」

おっと。信じてない顔だな。

むしろ、更に疑いを強めたまである。

だが、「宝物庫の偵察に来ました」なんて正直に言う訳にはいかない。

ここは、しらばっくれることに徹する。

「そうなんですか?俺、今日この屋敷に来たばかりなので…よく分からなくて」

「…」

あくまで、「知らなかった」と主張する。

あまり詮索されても嬉しくないし、ここは強引でも、話を逸らすべきだろう。

「それより…あなたは?昼間は見ませんでしたけど…」

「…私は、メリーディア・カレル・カミーリア」

と、その女…メリーディアは名乗った。

…カミーリア、だと?

ってことは…この女が…。

「メリーディアさん…。もしかして、マリーフィアさんのお姉さんですか?」

「…そう」

やっぱり。

調査書に書いてあった、マリーフィアの唯一の姉妹…。

俺にとっては、小姑に当たる。

まさか、こんな真夜中に、宝物庫の入り口で出会うことになるとは。

「そうだったんですね。済みません、ご挨拶に伺おうと思っていたんですが…。こんなところで失礼します」

「…」

「お聞き及びとは思いますが、俺は妹さんのマリーフィアさんと結婚させていただきました、ルナニア・ファーシュバルと…」

「…嘘よ。あなたはルナニアじゃない」

…は。

…何を言うかと思ったら…。

「?どういう意味ですか?俺はルナニア…」

「違うでしょう。あなたには名前が3つある。ルナニア・ファーシュバル。ルシファー・ルド・ウィスタリア。そして…ルレイア・ティシェリー」

「…」

「どれが本当の名前なの?本当のあなたは何者?…何の為に、マリーフィアと結婚したの?」

…この女。

予想以上に切れ者だぞ。

どれが本当の俺か、って?

そんなの決まってるじゃないか。…考えるまでもない。

しかし、それをメリーディアに悟られる訳にはいかない。

「おかしなことを言いますね、お義姉さん…」

「あなたに姉と呼ばれる筋合いはないわ」

「分かりました、じゃあ、メリーディアさん」

俺も、他人を姉と呼ぶのは気持ち悪いですから。

名前で呼ばせてもらいますよ。

「俺はルナニアですよ。マリーフィアさんの夫…。ルナニア・ファーシュバル・カミーリアです」

まさか、俺がカミーリア姓を名乗ることになるとは。

自分で言ってて、蕁麻疹出そうになった。