The previous night of the world revolution8~F.D.~

しかし、素朴な箱庭帝国料理は、生まれた時から高級料理ばかりを食べてきたマリーフィアの口には合わなかったらしく。

「箱庭帝国のお料理って、あんまり美味しくありませんのね…」 

どの料理もちょこっとずつ口をつけただけで、半分くらい残していた。

勿体ない。

かつて箱庭帝国民が憲兵局に支配されていた時だったら、例えマリーフィアの食べ残しでも、人々は争って欲しがったことだろう。

…なんて、マリーフィアに言っても仕方ないがな。

この女にとって箱庭帝国の歴史など、所詮歴史の教科書の数行でしかないのだ。

「そうですか?俺は悪くなかったですよ」

一風変わったダイエットメニューだと思ったら、意外と悪くないんじゃないですか?

「海に囲まれた国ですから、もっと魚介類が豊富かと思ったんですけど…」

「箱庭帝国近海はかなり荒れてるので、元々漁業は盛んじゃないんですよ。それに…魚なら、ちょっとあったじゃないですか」

「まぁ…ほんのちょっとですけど」

小鉢に。ちりめんじゃこみたいな小魚の佃煮がちょっとだけ。

魚介類はあれだけだったな。

海が荒れているせいで漁はほとんど出来ないし、漁獲高も僅か。

とてもじゃないが、庶民に手の届く食材ではなかった。

仮に手が届いたとしても、さっきみたいな小魚ばかりで、しかも内陸部に運ぶ為には、干したり、佃煮にして保存性を高める必要があった。

比較的国が豊かになった今でも、箱庭帝国人が取れたて新鮮な魚を食べる機会はあまりないんじゃないだろうか。

うーん。難しいですね。

「これだったら、ルティス料理を食べた方が良かったかもしれませんわ」

ルアリスがいないのを良いことに、言いたい放題のお嬢様。

失礼な人ですよ。

箱庭帝国の人々にとっては、これでもご馳走だったろうに。

その点、『青薔薇連合会』の幹部仲間達は、食べ物に文句をつけることはありませんでしたよね。

まぁ、アリューシャは野菜が嫌いだって言ってますけど。

『青薔薇連合会』には、貧民街出身の人が多いですから。

食べ物の有り難みというものを知っている。

このお嬢様には、逆立ちしたって分からないだろうな。

内心、心底軽蔑していたが。

そんな態度はおくびにも出さず、俺は笑顔で言った。

「そうですか。じゃ、明日はそうしましょう」

で、今度は箱庭帝国のルティス帝国料理は美味しくない、とか言うんだろう?知ってる。

全く、罰当たりな女ですよ。箱庭帝国で餓死した人々の幽霊に祟られてしまえ。