The previous night of the world revolution8~F.D.~

で、ルアリスおすすめの箱庭帝国料理の店に行ってみたのだが。

案の定、料理がテーブルに運ばれてくるなり。

「…何だか、思ってたのと違いますわ…」

あからさまに落胆するマリーフィア。

シェフおすすめのコース料理を頼んだのだが、テーブルに並ぶ料理は、お洒落なスープやパスタや、美味しそうな魚のムニエルや子羊のステーキ…などではなく。

すいとんの浮いた透明な汁物や、野菜の茎の漬け物。

雑穀の混じった薄味のお粥、これまた薄味の野菜の煮物。

山菜のお浸しと、デザートに甘みのない小さな団子のようなものがいくつか。それに干した果物。

飲み物は、渋い漢方薬みたいなお茶。

お洒落なワインやシャンパンなどはない。

「これが…箱庭帝国の郷土料理ですの…?」

「そうらしいですね」

「精進料理の間違いじゃなくって?」

まぁ、そう言っても過言ではないかもしれない。

「でも一応、肉もありますよ。ビーフジャーキーみたいですけど」

俺は、濃い茶色の薄い干し肉を指差した。

とは言ってもビーフじゃないでしょうから、ビーフジャーキーではないですが。

何の肉でしょうね。箱庭帝国の庶民が牛肉なんて食べられたはずがないから。

豚、イノシシ…。あるいは、犬や猫かもしれませんね?

なんて、言ったらマリーフィアは卒倒しそうだ。

「ジャーキー…ですの?飼い犬の食べ物ではなくて…?」

「普通に人間でも食べれますよ」

「…」

恐る恐る、マリーフィアはビーフジャーキーを指で摘んで口に入れた。

しかし。

「ううっ…。硬い、それに獣臭い…!」

俺も試しに食べてみましたけど。

うん、成程。これは確実に牛肉ではないですね。

美味しい訳ではない。だが、不味いとも言えない。

ワイルドな味です。

「それに…これは何ですの…?」

マリーフィアは怪訝そうな顔で、スプーンを使って透明なスープに浮かぶ、すいとんをすくった。

「すいとんですよ」

「す、すいとん…?」

「えぇと…メニューを見たところ…。…どんぐり粉で作ったすいとんのようですね」

「どんぐり…!?どんぐりなんて食べられるんですの…!?」

「えぇ。念入りにアク抜きすれば食べられるそうですよ」

何ならアク抜きしなくても、ゴキブリ時代のアリューシャなんか、殻を割ってそのまま食べてたそうですよ。

どんぐりとはいえ粉にして使っているから、そうと言われなきゃ気づきませんね。

何処となくほろ苦さを感じる。

「それに…味付けも薄くて、ほとんど味がしませんし…」

ほとんどの料理が、ほぼ塩味のみですね。

あとは、ふんだんに素材の味を活かしている。

「箱庭帝国の人々は…薄味が好きなんですの?」

「単に、塩以外の調味料が手に入らなかったんだと思いますよ」

砂糖が貴重品だったって、昼間にルアリスが言っていたじゃないですか。

塩だけでも、手に入るなら御の字だったと言うべきでしょうか。

良いじゃないですか。健康になれそうな味ですよ。

何度も言いますけど、シェルドニア王国でミミズペーストを食べるよりはマシでは?