更に、注目すべきは家だけではなく。
「うっ…。風が強いですわね」
「気をつけてくださいね、マリーフィアさん」
強く吹きつける横風に、思わずよろめきそうになるマリーフィアの身体を支えた。
世話の焼けるお嬢様だ。
よく見たらマリーフィアは、歩きやすいスニーカーではなく、ヒールの付いたパンプスなんか履いていた。
そりゃ歩きにくい訳ですよ。
旅行には歩きやすい、慣れた靴を履くのが鉄則でしょうが。
「この土地は、いつもこうなんですか…?」
「はい。箱庭帝国は元々、過酷な土地が多いんですが…。秘境の里は他の場所より更に厳しい土地柄なんです」
「よくこんなところに、村を作ろうと思いましたわね」
それは良い感想だ。
普通なら、こんな不毛な土地に根を張ろうとは思わないだろう。
普通なら、ですけど。
「それには事情があるんです、マリーフィア殿。この秘境の里に住んでいた人々は、憲兵局の粛清を逃れる為に、わざと人里離れた険しい土地に移住してきたんですよ」
と、ルアリスが説明した。
「憲兵局の…粛清?」
箱庭帝国に来たというのに、この国の歴史も知らないのか。この女は。
無学にも程がある。
これにはルアリスもうんざりするかもしれないと思ったが、ルアリスはご丁寧に説明してあげていた。
「かつて、この国を支配していた独裁組織のことです。秘境の里の人々は、憲兵局による弾圧を避ける為に、この場所に移住したんです」
「まぁ…。そんな歴史があったんですのね」
他人事っぽい。
実際ここに住んでいた、ルヴィアさん嫁のような人達にとっては、生きるか死ぬかの死活問題だったろうに。
「それに、この人里離れた土地だからこそ、秘境の里の人々は独自の文化を発展させて…」
と、ルアリスが説明していると。
近くのお土産物売り場の店先を見て、マリーフィアが悲鳴のような声を上げた。
「きゃあっ」
「ど、どうしました?」
「な、何なんですのあれは?」
マリーフィアが指差した先を、釣られて見てみると。
あぁ、成程。あれですか。
マリーフィアが見つけたのは、お土産物屋に売られていた藁人形だった。
腹の辺りに太い五寸釘を刺され、赤い糸で逆さまに宙吊りになった藁人形が、びっしりと並んで売られていた。
まぁこれだけ見たら、初見だとビビりますよね。
その気持ちは分からなくもないですが、だからって悲鳴を上げるほどではない。
異国の文化っていうのはそういうものです。
俺にとっては、建物から窓から外壁から、何なら花壇に咲いている花まで全部真っ白に統一されているシェルドニア王国の方が、余程ホラーですよ。
それなのに、ビビり散らしたマリーフィアは、俺の後ろに隠れた。
俺を盾にするとは良い度胸ですね。
「あ、あの気持ち悪い人形はなんですの…?」
「あぁ…。あれは秘境の里の名産品ですよ」
ルアリスは事もなげに答えた。
「あ、あんなものが名産品…?」
あんなもの、とは失礼な。あんなものでも名産品ですよ。
「呪いの人形じゃありませんの…?」
「まさか。むしろ、あれは幸運のお守りなんですよ」
「…!?」
ふっ。驚いているようですね。
この程度で驚いているようじゃ、箱庭帝国旅行は無理ですよ。
「うっ…。風が強いですわね」
「気をつけてくださいね、マリーフィアさん」
強く吹きつける横風に、思わずよろめきそうになるマリーフィアの身体を支えた。
世話の焼けるお嬢様だ。
よく見たらマリーフィアは、歩きやすいスニーカーではなく、ヒールの付いたパンプスなんか履いていた。
そりゃ歩きにくい訳ですよ。
旅行には歩きやすい、慣れた靴を履くのが鉄則でしょうが。
「この土地は、いつもこうなんですか…?」
「はい。箱庭帝国は元々、過酷な土地が多いんですが…。秘境の里は他の場所より更に厳しい土地柄なんです」
「よくこんなところに、村を作ろうと思いましたわね」
それは良い感想だ。
普通なら、こんな不毛な土地に根を張ろうとは思わないだろう。
普通なら、ですけど。
「それには事情があるんです、マリーフィア殿。この秘境の里に住んでいた人々は、憲兵局の粛清を逃れる為に、わざと人里離れた険しい土地に移住してきたんですよ」
と、ルアリスが説明した。
「憲兵局の…粛清?」
箱庭帝国に来たというのに、この国の歴史も知らないのか。この女は。
無学にも程がある。
これにはルアリスもうんざりするかもしれないと思ったが、ルアリスはご丁寧に説明してあげていた。
「かつて、この国を支配していた独裁組織のことです。秘境の里の人々は、憲兵局による弾圧を避ける為に、この場所に移住したんです」
「まぁ…。そんな歴史があったんですのね」
他人事っぽい。
実際ここに住んでいた、ルヴィアさん嫁のような人達にとっては、生きるか死ぬかの死活問題だったろうに。
「それに、この人里離れた土地だからこそ、秘境の里の人々は独自の文化を発展させて…」
と、ルアリスが説明していると。
近くのお土産物売り場の店先を見て、マリーフィアが悲鳴のような声を上げた。
「きゃあっ」
「ど、どうしました?」
「な、何なんですのあれは?」
マリーフィアが指差した先を、釣られて見てみると。
あぁ、成程。あれですか。
マリーフィアが見つけたのは、お土産物屋に売られていた藁人形だった。
腹の辺りに太い五寸釘を刺され、赤い糸で逆さまに宙吊りになった藁人形が、びっしりと並んで売られていた。
まぁこれだけ見たら、初見だとビビりますよね。
その気持ちは分からなくもないですが、だからって悲鳴を上げるほどではない。
異国の文化っていうのはそういうものです。
俺にとっては、建物から窓から外壁から、何なら花壇に咲いている花まで全部真っ白に統一されているシェルドニア王国の方が、余程ホラーですよ。
それなのに、ビビり散らしたマリーフィアは、俺の後ろに隠れた。
俺を盾にするとは良い度胸ですね。
「あ、あの気持ち悪い人形はなんですの…?」
「あぁ…。あれは秘境の里の名産品ですよ」
ルアリスは事もなげに答えた。
「あ、あんなものが名産品…?」
あんなもの、とは失礼な。あんなものでも名産品ですよ。
「呪いの人形じゃありませんの…?」
「まさか。むしろ、あれは幸運のお守りなんですよ」
「…!?」
ふっ。驚いているようですね。
この程度で驚いているようじゃ、箱庭帝国旅行は無理ですよ。


