帝都から長距離バスを乗り継ぎ、半日かけてようやく辿り着いた、秘境の里跡地。
来るだけでも大変なこの場所に、マリーフィアは当然、初めて来たようで。
「うっ…。何だか、肌寒いですわね…」
バスを降りるなり、マリーフィアは寒さを訴えた。
確かに。帝都より気温が低いみたいですね。
しかし、そこはルアリスも抜かりない。
「標高が高いので、この地方は帝都より寒いんです。ジャケットを貸し出してるので、良かったらどうぞ」
気が利くじゃないか。
ルアリスは、ダサい緑色のジャケットをマリーフィアに差し出した。
貴族であるマリーフィアは、その安っぽいジャケットを見て、何か言いたそうな顔をしたが。
背に腹は代えられないと思ったのか、不満げにジャケットに袖を通した。
「ルレイア殿…いえ、ルナニア殿も良かったら、どうぞ」
「俺は結構ですよ」
この程度の寒さ、なんということもない。
ちなみにルアリスには、俺のことはルレイアではなく、ルナニアと呼ぶように申し付けた。
マリーフィアにはルナニア呼びで通してるので、それに合わせて欲しいと頼んだ訳だ。
「そうですか。それじゃ、早速…。この辺りが、かつて箱庭帝国で、秘境の里と呼ばれていた場所なんですが…」
「な…何だか、変わった造りの小屋ですわね…」
マリーフィアは、里の跡地一帯に点在する、藁葺き屋根の小さな小屋を興味深そうに眺めていた。
「これは家畜小屋かしら。でも、こんなに小さくて家畜を育てられるのかしら…。あ、それともこれはただの物置なの?」
「あ、いえ。これは家畜小屋でも物置でもなくて、人の住む家ですよ」
「え、家…!?」
…何処からどう見ても家だと思いますけど。
何故、これを家畜小屋や物置だと思った?
「こ、これが家…なんですの?ここに、人が住むんですの?」
「はい、そうですが…」
「…」
マリーフィアの顔を見れば分かる。
こんなちっぽけな、狭い小屋に人が住むなんて、と思っているんだろう。
子供時代をスラム街で過ごしたアイズやアリューシャにとっては、こんな小さな小屋でも豪邸に見えるだろうに。
生まれながらに、帝都の高級住宅街にある立派な屋敷で暮らしてきたマリーフィアにとっては。
こんな小さな小屋なんて、ペットの犬小屋以下なのだろう。
ご立派なお生まれだこと。
ルアリスは、祖国の文化を侮辱されたようで内心思うところはあるだろうが。
しかし、顔色一つ変えず、隠すことなくこう答えた。
「少し前までは、箱庭帝国ではこのような家が一般的だったんですよ。帝都では都市化が進んでいますが、地方では未だにこんな小屋に住んでいる人々もいるんです」
「そ、そうなんですの…」
「電気も水道も通ってないので、灯りは蝋燭で、水は井戸や川から汲んでくることもあるんです」
「…」
そんな前時代的な生活、マリーフィアには想像もつかないんでしょうね。
有り得ないとでも言いたそうに、目を白黒させている。
蝶よ花よと育てられたお嬢様には、少々刺激が強かったか?
来るだけでも大変なこの場所に、マリーフィアは当然、初めて来たようで。
「うっ…。何だか、肌寒いですわね…」
バスを降りるなり、マリーフィアは寒さを訴えた。
確かに。帝都より気温が低いみたいですね。
しかし、そこはルアリスも抜かりない。
「標高が高いので、この地方は帝都より寒いんです。ジャケットを貸し出してるので、良かったらどうぞ」
気が利くじゃないか。
ルアリスは、ダサい緑色のジャケットをマリーフィアに差し出した。
貴族であるマリーフィアは、その安っぽいジャケットを見て、何か言いたそうな顔をしたが。
背に腹は代えられないと思ったのか、不満げにジャケットに袖を通した。
「ルレイア殿…いえ、ルナニア殿も良かったら、どうぞ」
「俺は結構ですよ」
この程度の寒さ、なんということもない。
ちなみにルアリスには、俺のことはルレイアではなく、ルナニアと呼ぶように申し付けた。
マリーフィアにはルナニア呼びで通してるので、それに合わせて欲しいと頼んだ訳だ。
「そうですか。それじゃ、早速…。この辺りが、かつて箱庭帝国で、秘境の里と呼ばれていた場所なんですが…」
「な…何だか、変わった造りの小屋ですわね…」
マリーフィアは、里の跡地一帯に点在する、藁葺き屋根の小さな小屋を興味深そうに眺めていた。
「これは家畜小屋かしら。でも、こんなに小さくて家畜を育てられるのかしら…。あ、それともこれはただの物置なの?」
「あ、いえ。これは家畜小屋でも物置でもなくて、人の住む家ですよ」
「え、家…!?」
…何処からどう見ても家だと思いますけど。
何故、これを家畜小屋や物置だと思った?
「こ、これが家…なんですの?ここに、人が住むんですの?」
「はい、そうですが…」
「…」
マリーフィアの顔を見れば分かる。
こんなちっぽけな、狭い小屋に人が住むなんて、と思っているんだろう。
子供時代をスラム街で過ごしたアイズやアリューシャにとっては、こんな小さな小屋でも豪邸に見えるだろうに。
生まれながらに、帝都の高級住宅街にある立派な屋敷で暮らしてきたマリーフィアにとっては。
こんな小さな小屋なんて、ペットの犬小屋以下なのだろう。
ご立派なお生まれだこと。
ルアリスは、祖国の文化を侮辱されたようで内心思うところはあるだろうが。
しかし、顔色一つ変えず、隠すことなくこう答えた。
「少し前までは、箱庭帝国ではこのような家が一般的だったんですよ。帝都では都市化が進んでいますが、地方では未だにこんな小屋に住んでいる人々もいるんです」
「そ、そうなんですの…」
「電気も水道も通ってないので、灯りは蝋燭で、水は井戸や川から汲んでくることもあるんです」
「…」
そんな前時代的な生活、マリーフィアには想像もつかないんでしょうね。
有り得ないとでも言いたそうに、目を白黒させている。
蝶よ花よと育てられたお嬢様には、少々刺激が強かったか?


