【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない


そして男の人たちが去っていくと、わたしは藍くんを見上げる。

けれどそれより先に、こちらに伸びてきた腕が、わたしの身体を抱きすくめていた。


「あ、藍くん……っ?」

「……あいつになにもされてないか?」


まるで支えを失ったように弱々しい声。

言葉にして答えたいのに、喉の奥にせり上がってくる涙の気配に声が詰まって、わたしはこくこくと首を縦に振る。


「よかった……」


耳元で吐き出される吐息交じりの声は、紛れもなく疑いようのない藍くんの本音で。

こんなに心配されるなんて思ってもみなかったから、思わず藍くんの腕の中で目をぱちぱちと瞬かせる。


「なんでここが……」

「夕食食ってきた帰り。歩いてたら由瑠の匂いがしたから、嫌な予感がして」

「そっか……」


"特別体質"のせいでピンチに陥り、"特別体質"によって助けられたらしい。

なんて皮肉な話だろう。