だるい身体に鞭を振るい、息を潜めたまま急ぎ足で歩いていた、その時。
「君、"特別体質"だよね? さっきからずっと甘い匂いがしてる……」
息の荒い声と共に肩を掴んだその手に、身体の身動きを封じられた。
恐怖に心臓がドクンと重い音をたてる。
恐れていた、最悪な展開だ。
わたしを見過ごしてはくれなかったようだ。
どうしよう、怖い……。
「無視はないだろう。自分から甘い匂いさせて男を誘惑してるくせに」
いたって真面目そうなサラリーマンなのに、フェロモンのせいで口調も乱暴になっている。
人をこんなにも変えてしまう、自分の身体が怖い。

