「……由瑠」 いつもより低く掠れた声で名前を呼ばれ、びくっと肩が揺れる。 藍くんの声が、耳の奥を這うように刺激してくる。 わたしの背はドアに押しつけられ、藍くんがわたしの顔の横に肘をついている。 ……もう、逃げられない。 この逃げられない状況の中、わたしはゆっくりと顔をあげた。 自分の顔が耳まで真っ赤であることを自覚しながら。 すぐそこには、つい目を奪われてしまう藍くんの顔がある。