【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない





調理実習おわりの昼休み。

わたしはエプロンも外す手間すら惜しみ、そのままの格好で一階にある昇降口に向かう。


形はちょっと不格好だけど、レシピ通りだから味には問題ないはず。

愛情はたっぷり詰め込んだつもり。


カップケーキを片手に、高揚感と共に廊下を歩いていたわたしは、ふと足を止める。

唐突に、不穏なことに気づいてしまったから。


……あれ、そういえば神崎くんって甘いもの苦手じゃなかったっけ。


わたしの頭の中の神崎メモを探り、青ざめる。


そうだ、神崎くん、甘いものは食べない人だった……!


だからバレンタインの日は、大勢の女子からのチョコをひとりひとり断っていたのを思い出した。