わたしは耳のふちがじんわり熱いのを感じながら、もごもごと口を動かす。
「ふ、太もも触られた、くらいだよ」
「な、なんだって!?」
瑛麻ちゃんの声が教室に響き渡り、またかという無数の視線を感じながらわたしは慌てて、瑛麻ちゃんの口を塞ぐ。
「瑛麻ちゃん、声がっ……」
「あっ、ごめんごめん!」
ちょうど先生が教室を出ていたからよかったものの、もし先生がいたら間違いなく注意されていた。
瑛麻ちゃんは声のボリュームを落としながらも、紅潮した顔でまくしたてる。
「そんなのもう襲われたも同じだよ! 藍先輩、ゆるるんのこと好きなんだよ!」
「ありえないよ、そんなの……!」
あんな女たらしが、わたしのことなんて好きになるわけない。
ちょうどいい暇つぶしなんだと思う。
来るもの拒まずな藍くんのことだから、きっと他の女の子にも同じようなことをしてるはず。

