わたしは元気に玄関のドアを開ける。


さぁ、今日も一日頑張るぞ!


……と、元気いっぱい出発しようとしたわたしは、ドアを開けたままそこで固まる。


「もう、藍ったらぁ」


耳に聞こえてくる、女の人のねっとりした声。

目の前には、男の人の首に手を回して抱きつく女の人の姿。


……サイアク。


わたしはそこに広がる光景に、思わず眉根を寄せた。

朝からこんな光景を見なきゃいけないなんて。


「あ、由瑠」


女の人の肩越しに、彼がわたしに気づいて、憎たらしいほど整った笑みを口にのせる。


柔らかそうな白銀の髪に、くっきり二重幅の下の魅惑を詰め込んだ瞳。陶器のようになめらかな肌。


この世のものとは思えないほど整った顔。

悪魔が存在したら、きっとこんなに美しいのだろうと思う。