『……ありが、とう』
『えへへ、よかったぁ』
そう言って笑ってくる由瑠の笑顔は、目にしみるほど眩しくて。
今でも心の一番柔いところで、あの時の笑顔が輝いている。
由瑠が俺に笑顔を向けてくれたあの日から、俺の人生は再び動き出したようなものだ。
そう、俺は笑ってしまうほどあっけなく、由瑠に初めての恋をした。
でも名前も聞かなかったし、もう二度と会うことはないだろうと思っていた。
けれどひとり暮らしをしていたアパートの隣室に、偶然高校に入学するのを機に由瑠が越してきた。
こうして再び俺と由瑠の人生は交差したのだ。
桜の木の下で出会った日のことを、由瑠は覚えていないようだった。
それでもいいと思った。
ここからまた始めればいいのだから。

