【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない


つんとした薬剤の香りが鼻をつく。


密さんがドアを閉めると、喧噪がやんだ。


喧騒から隔たれた白い室内の中、奥のベッドのまわりをカーテンが覆っていた。


そちらへと歩み寄りながら、密さんは沈痛な色を瞳に滲ませわたしを見下ろす。


「ありがとね、来てくれて。でも藍、まだ目を覚まさないんだ」

「そんな……。藍くんになにがあったんですか……?」


密さんが静かに白いカーテンを開けた。

そこには、ベッドに横たわり眠る藍くんがいた。

顔からは血の気が失せ、静かな空間なのに寝息さえも聞こえない。


「藍くん……」


藍くんの体調が芳しくないことは一目瞭然だった。

胸がきゅううっと絞めつけ、うまく息を吸えなくなりそうになる。