「あの、えっと、これは」
「もしかして……これ、中町さんが食べるはずだった……?」
ああ、バレてしまった。
なにも気にせずお弁当を食べてもらいたかったのに。
これじゃあなにもかも台無しだ。
自分の失態に、思わずうつむいた時。
優しい声が降ってきた。
「それなのに俺にくれたんだね。君は本当に優しいんだな」
「神崎くん……」
「ごめんねって言いたいけど……中町さんの優しさに、ありがとうって言うべきだよね」
顔を上げれば、そこには思わず見惚れてしまうくらい清らかな笑顔を浮かべた神崎くんがいた。
「俺が言うのも変な話だけど、このお弁当は半分に分けよう。それからあとで、このお礼をさせてほしい。いいかな」
どこまでもわたしに寄り添ってくれる神崎くんの優しさに、涙が出そうになる。
そうだ、わたしはこういうところに惹かれて、神崎くんを推すようになったんだった。

