【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない


人だからから外れた公園の前で、ふと藍くんが足を止めた。

そしてこちらを振り返る。

静かにかち合う瞳と瞳。


「由瑠、俺……」


まるで縫いつけられたように、動く藍くんの唇から視線を外せない。


けれど、その時だった。

ぽつ、ぽつ、と空から水滴が落ちてきて顔を濡らしたかと思うと、休む間もなく地面にしみを残し始めた。

瞬く間に本降りだ。


突然の雨に、「きゃー!」と遠くから女の人の悲鳴が聞こえる。


「え、雨……!?」


天気予報でも雨だなんて一言も言っていなかったのに。

もちろん傘なんて持ってきていない。

でもそうしているうちにも、容赦のない雨粒が身体をびしょびしょに濡らしていく。


忌々しそうに空を見上げた藍くんは、小さく舌打ちをしたあとで、わたしを見た。


「行くぞ、雨宿りができるところに」