「わー、綺麗!」 「すごーい……」 瑛麻ちゃんや先輩たちが、夜空に打ちあがる花火に夢中になっている。 けれどわたしの意識は、目の前の藍くんだけを見つめている。 花火の音に重なって、藍くんの声がわたしの鼓膜を揺さぶった。 「――その目、やめろよ」 花火を背に、笑顔を消した藍くんの瞳には危険な光が灯っていて。 「どっかに搔っ攫いたくなるんだよ」 わたしは下唇を噛み、そして答えていた。 「……いいよ。藍くんになら、攫われても構わない」