視線をカウンターに注ぎながら右へ左へと移動する杉田さん
一瞬鋭くなったかと思えば、首を傾げる。そんな様子を見つめ続けていると、その瞳が私を写した途端
私から見て左側に置かれた五枚が抜き取られた
「それは?」
トントンと揃えたそれらが一瞬でビリと真っ二つに破られた
「これさ、年中求人が出てるの、ヤバいだろ?だから却下」
「そうなんですね」
残った五枚を正面に並べた杉田さんは顎に手を当てて悩むこと数秒
先頭にある二枚を手に取った
「此処を受けてみたらどうだろう」
渡された二枚の求人はどちらも小規模クリニックだった
「履歴書書かなきゃ」
看護師免許を思い浮かべてみる
「え、ちょっと待ってアズちゃん」
途端に焦り出した杉田さんに首を傾げた
「・・・はい?」
「良いの?そんなに簡単に決めて、ほら、俺の独断と偏見が入ってるんだよ?」
「あ〜そんなことですか。だって、そもそも此処は私も選んだ病院ですよ」
「でもなんか責任感じちゃうな。もっとよく調べてみても良い?」
「杉田さんが居なきゃ、こっちの五枚を受けていたかもしれないでしょう?
だからあとは自己責任ですよ」
杉田さんは「参ったな」と少し肩を竦めて眉を下げた
残りの三枚は自分で真っ二つに破る
裏面も注意事項や地図が印刷されているからメモ用紙にもならないのが理由だけど
「潔いのは良いことだよ」
杉田さんは「男前!」なんて笑ってくれた