・・・ポン。ピンポン



夢の中でチャイムが鳴っている


もぅ。しつこいなぁ


こんなにリアルに聞こえるとか
最近の夢は臨場感も抜群だ・・・ん?


ピンポン


「・・・へ?」


ガバッと勢いよく身体を起こすと真っ暗の部屋に再度チャイムが鳴り響いた


「ヤバ」


寝起きのフラフラする足を踏ん張って玄関へと急ぐ


鍵とチェーンを外して扉を開くと


「不用心だな、オネエサン」


グレーのスウェットを着たヒロが立っていた


「あ」


インターフォンで応答すれば良かったのに、どうして開けちゃったんだろう


「寝てた?」


「・・・うん」


玄関扉を右手で開けたままヒロと見つめあう


なんとなくだけど、ほんとなんとなく

ヒロの機嫌が悪い気がする


徐々に覚醒してきた頭は

「どうしたの?」

聞くことを選んだ


二回瞬きをしたヒロは、次の瞬間には笑っていて


「オネエサンのご飯が食べたくなった」


いつもみたいに甘い声でオネダリをした


「・・・いいよ」


どうぞ、とヒロを招き入れると真っ暗なリビングの電気をつけた


「お出かけしてた?」


ヒロの視線の先に、帰ったまま放置されたお弁当


「そうなの。お昼ご飯も食べずに寝ちゃった」


思い出したのは自己嫌悪


「デパート?」


「あ、うん。ジョブスペースに行ったからね、地下にも寄ったの
そしたら美味しそうなお弁当見つけて」


「食べなかったと」


「・・・そうだね」


「てか、寝起きでご飯作って貰うの悪いな」


もうさっきまで感じていた不機嫌さは消えている


「ううん。いいよ、今日も大したことしてないからね」


「簡単に出来るのって」


「あ〜、冷凍のカレーがあるけど。それで良い?」


「あのオネエサンが作ったカレー?」


上目がちに見上げるヒロの破壊力抜群の表情に


「そうだよ」


平静さを装うのが精一杯


「じゃあそれ」


「ん。ちょっと待っててね」


年下の男の子って心臓に悪いかもしれない